国際的枠組みの変遷と「持続可能な安全」
国際的な枠組みから言えば、「持続可能な安全」は、国際社会の多様性を尊重するよう求めており、世界の様々な異なる文明、異なる社会制度と異なる発展の道という国家間の相互尊重、平和共存、多元的な共存を提唱している。
現在、客観的に見れば、世界の枠組みは米国の「一超」と、多勢力が競争の中で協力して並存する「一極多元」の構造となっている。大国の関係の枠組みは「一超多強」。一方、地域の枠組みは多元的並存と多極的対抗が交錯するなど、状況は非常に複雑だ。だが、将来の国際的な枠組みから見れば、「一極多元」が「多元並存」に向かう可能性は非常に高く、さらに「多元的一体」の方向へと変遷していくだろう。多極化という観点から見れば、将来の世界の多極化は多極化する間での相互依存が進むことから、2度の世界大戦前のような多極的な争覇という局面が出現することがないため、持続可能な安全を模索することは不可能ではない。20カ国・地域(20G)サミットの体制が証明しているように、発展途上国の国際問題における発言力は高まっており、国際的な協調が当今の国際関係で重要になっている。これにより、「持続可能な安全」を実現する可能性は高まったと言えるだろう。
これは以下の理由による。現在の時代はすでに帝国主義と植民地主義の時代ではなくなっており、植民地争奪によって大戦が引き起こされる可能性は存在しない。経済のグローバル化により、各国の相互依存関係は空前の深まりを見せている。排他的な貿易集団や侵略的な軍事集団が存在しない。核兵器が大国間の戦争に対して抑制的な作用を果たしている。情報化の発展によって国が情報交流不足を原因に戦争を発動する可能性が減少した。国際組織、国際ルールや安全メカニズムが相対的に健全である。戦争は各国の安全の利益に損害をもたらすため、平和と発展が依然として世界の主流となっている。
だが一方で、米国の金融危機によって世界経済は深刻な打撃を受け、各国の失業、資産の目減りなどが深刻な社会的動揺、治安の悪化をもたらす可能性があり、国内の安全と社会・政治的安定の問題はより突出している。国内の長期的な安全と公共安全の問題はすでに世界各国が高度に重視すべき国家的な安全問題となっている。国際テロリストグループの世界ネット化の傾向は「隠れた一極」を形成しつつあり、米国にとって空前の巨大な挑戦となっている。また、最近の英国BPの米国メキシコ湾の油田爆発による原油流出事故により、当地の海域の生態は被害を受けた。これは、同盟国の間であれ、事故などで相手側の生態の安全に深刻な脅威を与える可能性があることを示している。だからこそ、「持続可能な安全」という国をまたぐ安全と国際的な安全としての新しい概念を深く研究する必要があるのである。
「北京週報日本語版」2010年7月21日
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