中比の南中国海をめぐる紛争の経緯
中比の南中国海をめぐる紛争の核心はフィリピンが中国の南沙諸島の一部島嶼・礁を不法に侵略し占領したことによって引き起こされた領土問題である。その他に、国際海洋法制度の発展に伴い、中比間には南中国海の一部の海域において海洋境界画定の紛争も発生している。
1970年代から、フィリピンは前後して、武力行使により中国南沙諸島の一部島嶼・礁を侵略・占領し、不法な領土要求を打ち出した。歴史と国際法から見て、フィリピンの南沙諸島の一部島嶼・礁に対する領土主張には全く根拠がない。
第一に、南沙諸島はいまだかつてフィリピンの領土の構成部分であったことはない。フィリピンの領土範囲は1898年の『米西(米国・スペイン)パリ平和条約』、1900年の『米西両国のフィリピンの離島割譲に関する条約』、1930年の『英領北ボルネオと米領フィリピンの境界画定に関する条約』など一連の国際条約によって定められたものである。中国の南中国海諸島はフィリピンの領土の範囲外にある。
第二に、「カラヤーン諸島」はフィリピンが発見した「無主地」だという説は全く成り立たない。1978年、フィリピンは中国の南沙諸島の一部島嶼・礁を「カラヤーン諸島」と名付け、地理名称と概念上の混乱を引き起こし、南沙諸島を分割することをたくらんだ。
第三に、南沙諸島はいわゆる「信託統治地域」でもない。いまだかつて南沙諸島が国際条約や国連信託統治理事会の関連文書に記載されたことはない。
第四に、フィリピンの主張する「地理的近接性」と「国家の安全保障」はいずれも領土取得の国際法上の根拠ではない。
第五に、フィリピンは、中国南沙諸島の一部島嶼・礁が排他的経済水域と大陸棚の範囲内にあるから、関係島嶼・礁はフィリピンに属す、あるいはフィリピンの大陸棚の一部分になる、としている。この主張は『国連海洋法条約』(以下、『条約』と略す)が賦与している海洋の管轄権をもって中国の領土主権を否定しようとたくらむもので、「陸が海を支配する」という国際法の原則に背くものであり、『条約』の主旨と目的に全く適合しない。
第六に、フィリピンの中国南沙諸島の一部島嶼・礁に対するいわゆる「実効支配」は不法な侵略・占領によって確立したもので、違法で無効であり、国際法で明確に禁止されている。国際社会は、武力行使による侵略・占領で形成されたいわゆる「実効支配」を認めない。