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北京の美容業界に飛び込んで15年 ヘアスタイリスト・三島智之さん
本誌記者 勝又あや子  ·   2018-08-02
タグ: 美容;ファッション;中日交流
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「匠の技」だけでなく「匠の精神」を 

中国人の美容師について聞いてみると、「勉強熱心」という評価が返ってきた。技術講習会にも積極的に参加し、熱心にメモを取り、真剣に聴講するという。そうした需要をとらえ、日本の「カリスマ美容師」やヘア化粧品メーカーが中国で講習を行っている。例えば、美容室向けヘア化粧品メーカーのミルボンは北京市内の東直門に営業所を開設しており、自社のセミナールームで頻繁に講習会を開催している。しかし、中国人美容師に対し、三島さんは苦言も呈する。「感覚的なことよりも、『ここの角度は何度で、こうやって切る』といった、より直接的な技術講習ばかり好むんですよね」。三島さんの目には、ノウハウを手っ取り早く学ぶことにだけ熱心で、センスを磨くことをおろそかにしがちだと映るのだ。「匠の精神」を学ばず、「匠の技」だけを真似しようとしていると言ってもいいかもしれない。 

サロンで働く中国人のスタッフには、じっくり技術を教えていきたいと考えている。中国でお店をやる以上、中国人スタッフを育て、中国人スタッフで展開していくべきだと思うからだ。しかし、なかなか思い通りに育成できていないのが現状だ。三島さんによれば、技術は教えれば一定のレベルまで来るが、そこから先の差はやはりセンスだという。もっと根本的な問題もある。「だいたいある程度まで教えると、やめてしまうんですよ。そのもうちょっと上のレベルで、まだ教えることがあるのに。あと少しでうちの店でスタイリストとしてデビューできるのに、その最後の数カ月が我慢できなくてやめてしまい、他のお店でスタイリストとして始めちゃうんですよ。中途半端なのに」と三島さんは残念がる。 

次の展開へ 

とはいえ、うれしい出来事もあった。以前三里屯に店を構えていた頃に夫婦で働いていたスタッフが、出身地の河北省張家口に帰って自分たちの店を持った。その店の内装は、彼らが働いていた三里屯の店に酷似している。店を作る時に意見を求められ、内装の材質やレイアウトなどについて三島さんがアドバイスしたのだという。壁に据え付けられた鏡は、三島さんの現在の店舗のものとそっくりだ。三島さんは「これもパクったんですよ」と冗談めかして言うが、それは実のところ彼ら夫婦の三島さんに対するリスペクトの表れだと言えるかもしれない。三島さんは「うまく協力して一緒にやっていけたらいいですよね。彼らにも何かメリットがあるような感じで一緒にできたら……」と話す。 

三島さんはヘアサロンのほか、居酒屋も営んでいる。2016年に開店した。「居酒屋の雰囲気が好き」だし、現役美容師としての「寿命」がそう長くはないことも考慮して飲食店経営に踏み切ったのだが、美容師としても大きなメリットがあったという。三島さんの居酒屋にはヘアサロンの顧客も数多く通う。ヘアサロンでは顧客が次に来店するまで普段の髪の状態を確認することができないが、ヘアサロンの顧客が居酒屋にも来てくれることで、途中経過が見られるようになったのだ。「先週切ったばかりだけど、こんな感じになっちゃうんだ、じゃあ次はもうちょっとこういうふうにして、こう気をつけようっていうところが見える。前髪を下ろした状態でカットしたけど、意外と全部上げちゃうんだっていうような。じゃあ、上げるんだったら上げるなりの感じで切ったほうが絶対まとまるだろうな、とか。それを見られるっていうのはすごく楽しいし、その人にとってもいいですよね」。 

3カ月と言われて北京に来て、いつの間にか15年。自分の美容室を開き、飲食店経営にも乗り出した。ひょうひょうとしてつかみどころがないように見えて、その根底には「お客さんの信頼に応えたい。お客さんに似合い、満足してもらえるヘアスタイルを作り上げたい」という美容師としてのプロ意識がしっかりと流れている。変化の激しい中国では、美容シーンもどんどん変わっていく。その流れの中で、三島さんはこれからも自分のペースで、着実に進んでいくことだろう。

 「北京週報日本語版」2018年8月2日
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