「国際公共財」の提供
「大国の責任を果たすのは大変だ」と崔立如氏は言う。大国は自発的に考えることが必要であり、他国からは責任を果たし国際公共財を提供することが求められる。注目すべきは、中国がASEANに対する経済と安全保障分野、特に安全保障分野の国際公共財提供を打ち出したことは、新時代外交の新主張の反映だということだ。
これについて崔立如氏は次のような見解を述べた。「中国は経済が強みだが、安全保障分野の国際公共財は弱みだ。しかし中国はこの分野での国際公共財も提供しなければならない。中国はまだ東アジア地域の『安全保障のジレンマ』を打ち破れていない。したがって、一方ではよりよく危機を管理コントロールし、衝突発生が戦争に至ることを防ぐ必要がある。その一方で、安全保障のジレンマ発生の原因とメカニズムが異なるため、実力が同等でないことによって起こる一部の問題は、実力がつけば解決されるだろう。我々は自身の実力を高めなければならない。そして実力の向上に従って、中国は海上航行の安全確保など安全保障分野の国際公共財を提供していく必要がある」。
崔立如氏は、「中国はまだこの役割を果たす準備が整っていない。力の差はまだ大きく、力を高める道は険しく遠い。体制構築や競争力向上がうまくいかなければ、国際公共財を提供する基盤はできない」と感じている。
安全保障分野の国際公共財といえば、米国と切っても切り離せない。社会科学院アジア太平洋・世界戦略研究院中国周辺・世界戦略研究室主任の周方銀氏は次のような認識を示した。「中国はかなり長期間にわたって米国の東アジアにおける軍事優位性を揺り動かすことはできず、しかも米国は東アジアで2カ国間同盟を基盤にした安全保障体系によってその優位性を強化している。しかし、米国の東アジア同盟体系の不寛容性、米国自身が域外国家であること、東アジア諸国間にそもそも対立があることから、米国の東アジア安全保障問題解決の効率は下がっている。中国は自らが主張する地域多国間安全保障メカニズムを強化し、地域諸国の安全保障面の憂慮を減らして、米国同盟体系の影響を薄めるべきだ」。
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