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評論  
日本大地震の世界経済への衝撃

 

日本はパネルモジュールの駆動IC貼付で使用される異方性誘導膜(ACF)の世界最大の生産国であり、日立化成一社だけで世界市場シェアの50%以上を占め、しかもその多くが被害の大きかった茨城県下館事業所管轄の五所宮で生産されている。被災地でのパネル生産能力は大きくないが、現在サムスン、LG、友達(AUO)、奇美(Chimei)、Sharpといった五大パネル工場が使っているACFのうち、日立化成製のものが40%以上を占める。日立化成のACFが全面的に生産停止となれば、パネルモジュールへの駆動IC貼付工程に影響し、パネル生産は大きな影響を被ることになるだろう。

日本メーカーの信越化学、SUMCOは世界の半導体シリコンウェーハの50%以上を供給している。今回の地震で被害の大きかった宮城県、岩手県、秋田県、福島県にはウェーハ工場が18カ所あり、月間総生産能力は約39万枚(約8インチのもの)、世界の月間生産能力1000万枚のうち4%前後を占める。その二大企業がともに地震で被害を受け、一部生産ラインが損傷した。トップ企業の信越化学は被災地の近くに工場があり、SUMCOは本社が九州にあるものの、大地震で周辺の材料供給が影響を受けシリコウェーハの供給に影響が出ている。そのため、全世界の半導体メーカーがWACKER、MEMCなど日本以外のメーカーからの調達に切り替える必要性が生じ、価格も上昇している。

日本は世界の半導体とディスプレイ製造設備の最も重要な供給元であり、そのうちリソグラフィ装置はオランダのASMLを除いて、ほとんどすべてがNikon、Canon、NSKなど日本企業から供給されている。Nikonの専門に露光機を生産する精密機械工場は被害の大きかった宮城県と栃木県にあり、Canonの半導体やディスプレイ、露光機を主に生産する工場も栃木県と茨城県にある。

これ以上データを羅列するまでもなく、上記の事実だけで十分に日本の世界先進製造業における重要な地位が分かる。日本部品の不足により、ゼネラル・モータースは米国ルイジアナ州工場、ドイツ工場、スペイン工場の3カ所ですでに生産を一時停止し、ルノーの韓国合弁企業は月間生産量が15~20%減ると見られている。アップルのiPad2、ボーイング787などの製品もキーパーツ供給不足の問題に直面している。大きな実質損失のなかった業界ですら、不足予想によるパニック的な価格上昇が起きている。その典型がメモリ市場だ。日本最大のメモリメーカーであるアビダ(DRAM生産)、東芝(NANDFlash生産)の生産拠点はそれぞれ広島と名古屋付近にあり、地震の被災地である東北地方からは遠く地震の影響も小さいが、地震翌日にはほとんどの代理店が対外見積を中止し、貿易会社が買いだめ備蓄を開始、一部の貿易会社の対外見積額は0.3~0.5ドル上がった。現在、中国など主要国の小売・卸売市場では、どこもメモリ価格が大幅に上昇しており、地震後2、3日で20%以上も高くなったところもある。

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