地震と福島第一原子力発電所事故の影響で生産を停止した富士通半導体工場 (3月17日、福島県会津若松) ( HitoshiKatanoda撮影)
日本の部品不足問題に対処するために、各国企業はその他の国や地域のサプライヤーに乗り換えている。この動きは、先進製造業の輸入からの転換を推進する努力をしてきた中国などの国にとっては新たな発展原動力となるだろう。しかし納期通りに供給して商業的な信用と評判を守るため、さらには大災害時ですら納期に間に合わせることで商業的な信用と評判を高めようと、日本企業も一部の生産を国内工場から海外工場に移し、生産能力を日本国内から条件を備えた外国に移転する動きを加速するだろう。そうなれば東アジアの産業チェーンは新たに編成されなおすことになる。
為替市場では、地震後の円相場はまず円高となり、その後円安になるだろう。海外資産が少ない国にとって、これほどの大地震、実際生産能力と資産の巨大損失は、本位貨幣価値にとって確かに巨大な悪材料となる。しかし海外資産が巨大、特に保険会社の海外投資の多い日本では、驚いたことに地震直後に円高となった。市場参加者が、日本の保険会社が震災後の保険金支払いに備えて次々に海外資産を現金化し日本円を買い入れ、日本企業も海外資産を売って国内の損害と復興に備えるだろう、と見たからだ。しかしこの波が過ぎると、地震が日本経済の土台に与えた損害が円相場に表れてくるだろう。しかも、今の円高の重要な原因の1つは日本企業が国内の損害と復旧に備えて海外資産売りに転じるという予測だが、破壊的な地震とそれによる顧客、シェアなどの損失により、多くの日本企業は少なくとも一部の生産能力の海外移転を検討するだろうし、国内生産拠点の再建については元の規模ではなく規模縮小になるか、ひいては再建すらしないかもしれない。そうなれば日本企業のドル売り円買いの規模は今市場が予測しているほど大きくはならず、円相場にとって悪材料となるだろう。
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