2016年4月26日はチェルノブイリ原発事故発生から30年目に当たる。この事故をしっかりと心に刻むことは、現在の世界の原子力エネルギー利用にとって依然として警告の意義を持っている。原子力エネルギーの発展を振り返ると、人々に最も大きな心理的衝撃を与えた事故は3つある。1979年の米国スリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故、そして2011年の日本福島原発事故だ。中でも死者数の多かったチェルノブイリ事故の恐怖は、今でもありありと人々の心に甦る。ある意味において、その恐怖は発生当時から今日まで続いており、中国を含む世界の多くの国々で原子力エネルギー発展に対する世論に影響を与えている。
理性によって各種エネルギーの発電効率と偶発事故による致傷・致死者数の割合を比較すれば、実際のところ原子力エネルギーは石炭など他のエネルギーより安全であることに気づくだろう。問題は、原子力エネルギーが一度事故を起こせばその破壊力がより大きく、環境への影響がより修復の難しいものになることだ。また心理的に、人は見ることのできる危険よりも気づくことのできない危険を恐れるものである。従って、原発は事故発生率が極めて小さいにもかかわらず、多くの人が放射性物質拡散に対する心配と恐怖にとらわれている。核の恐怖は原発事故の暗い影であり、人々の心理状態が生むものでもある。ある意味においては、人類が「自ら作り出した脅威」だと言える。
現在のところ、世界の各主要原子力エネルギー推進国は原子力エネルギー発展の面で程度や形式は異なるもののどの国も社会的な反対に遭っている。大まかに言うと、こうした反対はたいてい環境保護団体の原子力エネルギーの環境破壊についての反核アピールに端を発している。欧州諸国、日本、ひいては中国もこの面では似通っている。