「一帯一路」枠組み内での中日経済・貿易協力 

長い間、中日両国間においては「政冷経熱」という特別な現象が見られたが、冷え込んだ政治関係が経済・貿易協力に多くのマイナスの影響を与えたことは疑う余地がない。昨年来、中日関係に改善の兆しが見られ、さらに中日平和友好条約締結４０周年の今年、両国関係改善の勢いはますます増している。中日ハイレベル経済対話が８年ぶりに再開し、李克強総理も５月に日本を公式訪問し、日本側から「公賓」という最高待遇で迎えられた。政治関係改善のメリットはすでに経済・貿易面に反映されている。「李総理の訪日は中国の地方政府や企業関係者を刺激し、地方同士の交流も急速に改善し、中国の地方政府の人たちも今次々日本に来ています。日中経済協会は中国の中央・地方政府や企業の訪日もお手伝いしているが、仕事が急増しており、嬉しい悲鳴を上げています」と岩永さんは笑顔で語った。 

また、「一帯一路」（「シルクロード経済ベルト」と「２１世紀海のシルクロード」）構想について、日本側も積極的な態度を示している。最近、安倍首相は「一帯一路」について、「洋の東西、その間にある多様な地域を結び付けるポテンシャルを持った構想だ。地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本としては、こうした観点からの協力をしていきたいと考える」と指摘した。「『一帯一路』構想枠組みの中で、日本と中国が第三国市場で協力できるというようなことになれば、それは非常にいいことです。実は先日李克強総理が日本に来られた時にも、『第三国における日中民間経済協力に関する覚書』に調印しました。日本の企業はこれを非常に喜んでいると思います」と岩永さんは話す。また、具体的な協力分野について、岩永さんはエネルギーと物流を挙げ、次のように述べた。「エネルギーはその一つです。より効率のいい発電所、あるいは新エネルギーの発電所を一緒に第三国で作るというようなプロジェクトが考えられるのではないかと思います。それから、物流関係。中国からヨーロッパに鉄道で輸送する物流が今どんどん発展しています。日本の企業の関係者も注目していて、これの発展に貢献できないかと考えています。日本の企業が中国の鉄道、さらにヨーロッパまでの鉄道を利用して荷物を運べば、荷物の量も増えるので、中国の物流にとってもよりプラスになり、安くなりますから、そういう可能性にも期待をしています」。

一方的な投資から双方向の投資へ

最新データによると、２０１７年における日本の対中投資は前年比５．１％増の３２億７０００万ドルとなり、前年までの４年連続の減少から増加に転じた。日本の対中投資が４年連続で減少した原因について岩永さんは、為替の大きな変動もありながらも、中国経済の構造変化にも大きく関わっていると分析した。岩永さんは次のように指摘する。「中国においては、今までは日本の企業の投資というのは、低廉で優秀な人材と労働力を使って生産し、世界に輸出するという製造業中心。中国も『世界の工場』の地位を得ました。今、中国のみなさんは豊かになってきた。つまり労働コストが上がってくるのです。中国の経済構造が変わり、生産の中心から消費の中心に変わって、『世界の工場』から『世界の市場』に変わってきたと思います。そうすると、今までと同じような投資というのはもうできないわけです。この４、５年、多くの日本企業が撤退することになってしまった。日本の企業も今後新しい中国の経済構造に合わせた投資をしていく必要があるわけですが、その切り替えに時間がかかったということではないかと思います」。過渡期を経た今、多くの日本企業が再び中国に目を向けるようになった。ＪＥＴＲＯの調査では、２０１６年に中国での事業を「拡大する」と答えた企業は４０．１％だったが、２０１７年には４８．３％と改善してきた。その成長がまさに実際の投資データにも反映された。

中国の経済力と技術水準の上昇にともない、中日間における投資の方向にも変化が見られた。「日本が一方的に投資する時代ではなくなりました。日本も中国の投資先の一つであり、双方向の投資が望まれます」と岩永さんは語る。