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元駐日特派員林国本さんの眼  
顕在化しはじめた五輪効果

                 林 国本

さいきん、北京では公共交通システムがひとつ、ひとつ完工し、市民のかなりが一応満足しているようだが、近代化都市と言うにはまだまだ至らぬ点がかなりあるので、主管部門の人たちもたいへんだろう。これだけ経済力の増強が国際的に認知されはじめている今日、さらなる努力が必要であることは多言を要しない。

数年前までは、ひどい交通渋滞にぶつかったりすると、バスの中では必ず一人か二人のすごいお兄ちゃんやおじさんがいて、「これでオリンピックを開催するつもりか!冗談じゃないよ!」と言って声をはり上げていたが、さいきんは、みんな実におとなしくなったようだ。いろいろな面で改善がいくらは見られるようになったからだ。

中国は発展途上国であり、百数十年らい諸外国に見下げられる悲惨な現代を送ってきた。産業革命の波に乗り遅れた結果、諸外国のえじきとなり、大虐殺ということもその過程で起こった悲しい結果のひとつなのであるが、この数十年、いろいろな曲折はあったが、とにかく二十年以上の改革、開放で、オリンピック、万国博を招致する国際的地位も獲得し、さいきんは月探査衛星射ち上げの成功、外貨準備高で世界一(人口平均はどうか、ということを忘れてはならない)。

足元の北京オリンピック・カウントダウンも残すところあと二百数十日となった。

まずは、世界各国からのお客様を迎えるための北京首都空港の拡充工事、空港へのアクセスのさらなる利便化、お隣りの都市天津へのアクセスの利便化は、さながら私が特派員として東京に駐在していた頃の支局の所在地東京の中目黒から東横線で横浜にショッピングに出掛ける気分の距離。北京市内においては公共交通システムがひとつ、ひとつ完備されるに至り、料金も格安で、通勤している人たちも、かなり満足しているようだ。この措置がとられて、市民が喜んでいるところに、また、国際石油価格の高騰ときた。市当局はグッとこらえて、格安料金を一銭も動さなかった。そして、補助金を出すことで乗り切ろうとしているようだ。環境問題、水不足、テレビに映る当局の人たちの額のシワが増えたように感じるが、そこが人民にためにある政府の真骨頂の見せどころ。

外国のエコノミストの間では、ポスト・オリンピックの景気の腰折れ、物価上昇によるこれまで政策効果の「帳消し」などが語られているが、私見ではあと二十年は大丈夫だと思っている。オリンピック、万博以上のニーズがまだたくさん存在しているし、大問題と見られている農民問題も、三十いくつもの省、自治区に分担させて解決すれば、震え上がるほどの難問ではない。

顕在化しはじめた五輪効果の最大化、持続化に努めれば、さらによくなるに違いない。

「北京週報日本語版」2007年12月19日

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