製紙術は恐らく古代発明のなかで継続性という点で最強かもしれない。現在でも中国にはこうした方法で紙を製造している人がおり、しかも多くの環境保護を主張する人たちは汚染をもたらす現代の製紙技術に反対の姿勢を示すとともに、ゼロ汚染である古代の製紙法を採用するよう呼びかけているからだ。
中国の史料の記載によれば、105年、蔡倫という人が前人の経験を総括して樹皮や麻、破れた布、破棄された魚網などを原料にして紙をつくった。材料となる資源が増えたことで生産コストは低下し、紙は大量に生産されるようになる。
蔡倫が製紙技術を発明する前は、甲骨や青銅器、竹簡、木片、綿や絹が記事の材料とされていた。こうした材料は高価であったため、貴族しか用いることができず、平民は文化を学ぶことはまったくできなかった。製紙術が生まれて以降、材料は紙へと変わる。平民でも買えるようになり、また自ら紙を作れるようになったことで、文化の伝承に向けた条件が整った。
宋代になると、中国人は稲や麦草で紙をつくるようになる。清代中期には、手作業の製紙がかなり発達してことで、紙の質は向上し、種類も豊かになった。
史料の記載によれば、製紙術は7世紀に至って東、朝鮮や日本へと伝わり、8世紀にアラビアに、10世紀にはダマスカスやカイロへ、11世紀にモロッコ、13世紀にインド、14世紀にイタリアへと伝わっていった。イタリアでは多くの都市に製紙工場が設立され、ヨーロッパの製紙技術伝達の重要な基地となった。そこからさらにドイツや英国に伝わった。文字の媒体コストは大幅に低下し、知識が平民の間で普及するようになり、世界の科学技術と経済発展が大々的に促されることになった。
現在、中国は世界の紙製品の主要な生産国、消費国であると同時に、紙製品の主要な輸入国でもある。
国家発展・改革委員会工業司の賀燕麗副司長によれば、06年の中国の製紙企業数は3600社、生産能力は約7000万トン、消費量は6600万トン。生産量、消費量ともに世界第2位だ。
外資系企業も急速に発展している。92年に最も中国に早く参入したインドネシアの金光グループは現在、中国最大の製紙企業。03年6月には日本最大の王子製紙グループも工場を設立した。
発展・改革委員会のデータでは、製紙工業の総資産で外資が占める比率は43%。一部外資は高級紙や段ボール市場で主導的な地位を占めており、シェアは50%を超える。中国が計画している500万ヘクタールのパルプ基地では、外資が3分の1を占めている。
製紙を発明したが故に人類が永遠に記憶していることを、蔡倫が知るよしはないだろう。90年8月18日-22日にかけてベルギー・マルメジーで開かれた「国際製紙歴史協会」第20回代表大会は、全会一致で蔡倫を製紙術の偉大な発明家に認定した。
「北京週報日本語版」2008年8月
|