国内外の矛盾が招いたベトナム反中暴乱
中越海上衝突は深刻な反中暴乱事件へと発展していき、多くの国際問題研究者やウォッチャーに衝撃を与え、驚かせた。筆者は、今回の反中暴乱事件はベトナム国内に長年蓄積されてきた矛盾が一気に爆発した縮図で、国際・国内の多方面の要因が総合的に作用した結果であり、必然中の偶然であった、と考える。
第一に、ここ数年、ベトナムは金融危機の影響を受け、景気の下向き圧力が強まり、大量の労働者が失業し、貧富の二極分化が深刻化し、国内民衆の政府に対する不満を呼び、少数の不法分子が機に乗じていざこざを起こし、不満をぶちまけた。
第二に、ベトナム国内外の人権組織と民主促進団体が相互に結託し、民衆の「愛国の情熱」を利用し、そそのかして騒動を起こし、機に乗じて反中暴乱を起こした。反中デモは最初にベトナム国外で行われ、デモ参加者の一部は国外脱出した反政府分子だった。この事件は表面的には反中暴乱だが、実のところその真実と背後の目的はベトナム政府と党に対する反対であったと思われる。しかし客観的には、中国系企業と中国人が最大の被害者となった。
第三に、ベトナム民衆の外資企業に対する複雑で矛盾した心理が反映されている。ベトナムは革新開放を実行し、外資企業がベトナムに進出し急成長を遂げているが、ベトナムの民衆は外資企業に対して一種矛盾した心理を抱いており、歓迎と拒否の相半ばした心情が見られる。
第四に、ベトナムの党と政府上層部に、対中関係について深刻な意見の食い違いが見られる。ベトナムの親中強硬派は「北派」の利益を代表し、中越両党と両国の友好関係の大局を強調し、前世代の指導者が結んだ同志であり兄弟のような友好関係を大事にしている。しかしグエン・タン・ズン総理を指導者とする少数の政府上層部は「南派」の利益を代表し、現実主義国家利益至上原則に従い、ベトナム民族主義と若者の心情を反映している。従って、今回の衝突において、グエン・タン・ズン総理の領海に関するさまざまな発言や行為が、反中暴乱事件での政府の無策ぶりを招いた要因でもある、と我々は見ている。
今回の衝突における米国要素は無視できない。米国は世界の霸権国家であり、米国の地縁政治利益は世界に広がり、米国は国際舞台でリーダーの役割を演じ続けなければならない。中国は台頭しつつある大国であり、中国の台頭は米国にとって一種の恐怖感を伴い、脅威であり試練でもある。中国の台頭を前にして、米国は中国の「挑発」に対応する準備はできていると述べ、「アジア回帰」を発表し、東中国海・南中国海の紛争で中国を批判し非難し続けている。その一方で、米国はそのアジア太平洋の地縁政治利益を守るため、必然的に同盟国との関係を強化し、同盟国の中国に対する挑発行為に助勢せざるを得ないのである。
ベトナムは米国の同盟国ではないが、米国の日本とフィリピンへの支持はベトナムにとっても励ましと自信になった。ベトナムは南中国海紛争で、米国はきっとベトナムの主張と行為を支持すると確信し、中越が結んだ一連の海上紛争平和解決に関する協定や声明を顧みず、国の国際的信用も顧みることなしに、南中国海問題で日増しに強硬になり、中国を挑発するという冒険に出た。ベトナムは、中国は民族復興を実現するために、今後10年は南中国海でベトナムへの武力行使は行わないだろうと踏んで、この時機を十分に利用して、南中国海における利益を守り、固めるべきだと考えたのだ。
米国の同盟国である日本も中越衝突で事態を煽っている。中日の釣魚島をめぐる紛争は激化する一方だ。日本は釣魚島問題で中国と対抗し衝突するほかにも、南中国海紛争で、チャンスをかぎつけ、中国と南中国海で領土紛争のある国を大いに励まし、そそのかし、援助して、有利な時機をとらえ、自ら挑発し、新たないざこざを絶えず起こしている。
「北京週報日本語版」2014年6月9日 |