■100年後にも仙台と魯迅の絆
朴澤さんは、事前にネットで連絡をとってお願いした仙台のボランティア・ガイドさんだ。60歳代とはとても思えない若々しくて外向的な女性だった。朴澤さんの同僚の郡司克一さん(東北大学OB)は、わざわざ魯迅ゆかりの場所をまとめ、プリントアウトしてくださった。そこで私たちは先に、東北大学にある魯迅胸像と旧仙台医専跡碑を訪ねた。

東北大学片平キャンパス、魯迅胸像前で拝礼
郡司さんの学生時代に魯迅のことが話題になることはなく、中日友好の時代になってから、東北大学もゆかりの地に大騒ぎして石碑を作った(1992年)そうだ。「階段教室」も中国人にとって観光地となった。また、近くの東北大学資料館に「魯迅記念展示室」も設置されているし、仙台城三の丸の仙台市博物館敷地内に「魯迅の碑」と「魯迅胸像」がある。
朴澤さんによると、東北大は、魯迅という留学生を誇りに思っているし、彼女自身も魯迅が好きだそうだ。他の東北大学の学生の話によると、仙台では魯迅を知らない人はいないし、魯迅に因んだ中日友好団体もいくつかあるほど魯迅が親しまれている。魯迅先生と仙台の絆は、百年あまり後も大切に保たれていることを確認してとても嬉しかった。
震災から1年、今は中国人観光客の来訪が途絶え、魯迅碑に供えられた花もなかった。魯迅先生も寂しがっているのではないかと思い、中国人留学生の1世紀後の後輩として、私は先生の胸像に深くお辞儀し、留学の成果を祖国に持ち帰ることを誓った。
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