中文 | English | Français | Deutsch
 
 
ホーム 政治 経済 社会 中日交流 文化 文献 特集
ホーム >> ウェンナン先生のブログ >> 本文
  • descriptiondescription
◇非典(SARS)について◇
~大学生が書いた当時の作文を読んで~
元南京大学日語科教師・斎藤文男  ·   2020-08-14  ·  ソース:北京週報
タグ: 南京大学;感染症;中日交流
印刷

~「非典から学び、禍を福に転じるべき」と主張~

こんな時「SARS」のテーマとしての作文が出されたので、学生はSARSについて真剣に考えたようだ。SARSはインフルエンザのような症状だが、死者が出たり感染力も速く、国の危機と認識している人が多かった。その反面、悪い事ばかりではなく、手洗いや嗽の習慣、それに道路にタンをやたらに吐かないようになったなど、環境衛生面にも注意するようになったことなどを作文で指摘していた。

加えて、非典から学んだ事として、今後同じような感染病が流行した場合の予防策として、政府が事前に対策を準備したり、情報公開の重要性、感染者の社会に対する責任など、これを機会に検討しておく必要性なども強調する作文があった。

この作文のテーマを出題した時は、まさか10年以上も過ぎてから、同じようなコロナ禍が起きるとは考えていなかった。今読み返してみると、学生が作文で「非典を過去のこととするのではなく、そこから学んだ教訓を身に着けて禍を転じて人間全体の福とすることが必要だ。」という主張の素晴らしさに驚かされた。

~自分で書いた、当時の日本語力に驚く~

この作文を書いた卒業生の一人と今も時々連絡が取れているので、書いた本人に作文の内容をメールで送ると、「これは本当に私が書いたものなのでしょうか?」と驚いていた。「は」と「が」の使い方や基本的な助詞の使い方、「医者」を「医師」と直した他は、「ほとんど直してはいません。」とメールに書いて、原文と少し直した作文を送信しました。

すると本人から「送って頂いた私の作文は、今の私の日本語力に比べてとても素晴らしいもので、現在の日本語力が随分落ちていると反省しました。」とお礼の返信メールが来た。この教え子は卒業後も日本語を使う仕事に就いているが、学生時代の自分の語学力が劣化しているのを恥ずかしく感じながら、「これからも勉強していきます。」と書いていた。

“医師”は「所定の資格を得て、病気の診療・治療を業とする人。」で、“医者”は「病気の診療・治療をする職業の人。医師。」と広辞苑にある。私も作文を採点した時、「医師」よりも「医者」の方が、なんとなく温かみのある口語調の言葉で、「医者」は資格がなくとも診療・治療をした人でも「お医者さん」と呼ぶこともある。だから新聞記事を書く時は必ず「医師」を使ってきたことを教室で説明した。

採点した際、「医者」とあるのを「医師」と直して返却していたが、直した理由を丁寧に説明してやれば、学生の正確な日本語力もさらに上達していたかもしれない、と今更ながら反省して心で謝った。

~作文で楽しかった学生時代の思い出が蘇る~

この教え子は当時のクラス仲間に、学生時代の自分の作文が、先生から送られて来てそれを読んだら、「学生時代のことが、あれこれ思い出された。」とメールで知らせたという。仲間からは「わあ~!いいなあ。私にも送ってくれるように連絡してください。」「『私は卒業して日本語と関係ない仕事に就職してから、あまり日本語を使っていないので、先生に宜しくお伝えてください。』などというメールをたくさん頂いた。」と知らせてくれた。

教え子たちは卒業してから10年以上経ってから、自分が書いた作文があることを知らされて、青春時代を過ごした楽しい“あの時”が自然と蘇ってきたのだろう。

私も日本で好きな職業として、新聞記者を35年間経験して定年となった後は、南京大学に勤務して12年間、これほど楽しく有意義で、遣り甲斐のある学生たちとの交流の期間を共にすることが出来たことは、天が与えてくれた晩節のご褒美だと思い、教え子たちみんなに感謝したい。この作文集が北京週報に掲載されたら、作文をみんなで共有すれば、楽しく夢多かった学生時代の思い出は、あれこれがより鮮明になるだろうと思う。

「北京週報日本語版」2020年8月14日

シェア:
リンク  

このウェブサイトの著作権は北京週報社にあります。掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。


住所 中国北京市百万荘大街24号 北京週報日本語部 電 話 (8610) 68996230
  京ICP备08005356号 京公网安备110102005860

中国語辞書: