さらにフィリピン経済を分析してみると、その内憂はいっそう軽視できない。フィリピン経済はその構造ゆえに、外部経済環境の変動に相対的に脆く、国際経済政治環境の変動が早晩フィリピン経済に大きな打撃を与えることが決定づけられているからだ。
経済社会の不確定性に悩まされるフィリピンは、平和で安定した外部環境を必要とし、対中経済貿易がその経済の持続的かつ安定的な成長の力添えをすることを必要としている。そして中国のほうもフィリピンにそのような余地を提供することが可能だ。2015年のフィリピンの物品貿易赤字は急速に増大し、その重要な原因の1つは対中輸出の激減だった。2015年の中国のフィリピンからの輸入は人民元換算で8.6%低下し、今年1~4月にはさらに13.1%低下した。同時に、中国の対フィリピン輸出は引き続き増加し、2014年、2015年はそれぞれ16.9%、15.0%増となり、今年1~4月の前年同期比成長率は27.4%にも達した。このような構造は、フィリピン経済が中国からの消費財や資本設備供給から離れられないのに、他のASEAN諸国のように中国の輸入需要の急速な拡大というチャンスを十分に活用できていないことを示している。対中関係を根本的に改善することができれば、フィリピン経済にとって大きな吉報となることは間違いない。(梅新育:商務部研究院研究員)
「北京週報日本語版」2016年8月1日