アジアの活力を自国の発展に結びつけようと、イギリスなど主要先進国がAIIBへの参加を表明し、中国の当初の予想を上回る57カ国が加盟して発足した。米国は現時点では参加を見合わせているが、対抗意識を示しているわけではない。同じアジアの一員でありながら「孤高」を守る日本の安倍政権の依怙地ぶりが目立つ。国際通貨基金(IMF)は人民元を5番目のSDR(特別引出権)通貨として承認した。世界経済における人民元の地位が高まることは確実で、日本は現実を踏まえた対応をすべきである。
歴史を動かす根本的な力は軍事力ではなく、経済力にある。人々が平和、公平、安心、平等に暮らせる環境の確保こそ最大の安全保障である。そのために必要なのは豊かさに向かって前進できる社会基盤の整備である。
かつて「東亜の病夫」と蔑視され、列強(とりわけ日本)に苦しめられた中国が、さまざまな曲折・模索を経ながらも、特定の国との同盟や従属の関係を持つことなく、社会主義の旗を下ろさずに、世界第二の経済大国にまで成長した。「先富」論で発展の契機を作り、活気が生まれたらその活力を内陸・貧困地帯に持ち込み「共同富裕」の実現を目指している。グローバル化とネットワークの発達で、ものごとが地球規模で展開する時代になり、より一層の発展を目指す中国は「一帯一路」構想を提起した。ユーラシア大陸、さらにはアフリカをも巻き込んだ、インフラ整備を核とした、共同発展をするなかに中国自身の発展を見いだそうとする壮大なスケールの戦略である。中国の台頭を「脅威」としか見ることのできない冷戦思考の人間には、この新しい時代の流れを読み取ることはできなかろう。
日本はこの時代の大きな潮流をしっかりと捉え、一衣帯水の隣邦である中国、韓国との信頼関係を強化し、お互いの長所を活かしつつ、共に手を携えてアジア、さらには世界の平和と発展のために貢献する道を開拓していく必要があるのではなかろうか。
「人民中国」より2016年3月15日