ここで指摘しておきたいのは、中国が二酸化炭素排出量のピークを2030年よりも前倒しにし、その後は排出量減少に転じることを強く決意していることだ。それは、世界最大の発展途上国である中国が全人類のために果たすべき義務だからであるのみならず、中国の国内社会発展にとって差し迫って必要だからである。
ここ数年、中国の多くの地域で見られる深刻なスモッグは経済社会の発展方式に警鐘を鳴らしており、環境を保護し、持続可能な発展を維持することの重要性を中国人は適切に認識している。スモッグを減らすことと二酸化炭素排出量削減は大気物理学においては同一範疇に入り、中国の自国の発展ガバナンス目標と欧州が最初に提唱した地球温暖化抑制目標は非常に符合している。
今や、二酸化炭素排出量削減に関して、「排出量が多い」と批判する外部の人よりも中国社会のほうがより懸念していると言える。なぜなら、地球温暖化はつまるところゆっくりとした過程であり、その危害は何世代もかかって感じ取れるようになるものだが、スモッグはそうではないからだ。スモッグは多くの中国の大都市で、住民を朝起きた時からすっぽりと包み込み、彼らの気分を損ない、健康に危害が及ぶのではないかと心配させる。スモッグは中国人が最も憎む汚染現象の1つであり、人々は今すぐにでもスモッグ発生源を取り除き、青空を取り戻すことを切望している。だが上述した通り、スモッグの成因と高い二酸化炭素排出量には大きく重なり合うところがあるのだ。
しかしスモッグをなくすこと、つまり二酸化炭素排出量を急速に削減することはそう簡単なことではない。中国はここ数年、発展と環境保護とのバランスを取ることに非常に苦労してきた。中国は人口が多すぎて、皆が車を運転し、暖房や冷房を使い、いい家に住み、旅行回数を増やせば、二酸化炭素排出量は次第に増えていってしまうのだ。人生は平等なものである。一部の人が豊かになった後、二酸化炭素排出量増加抑制の重要性に気づき、他の人に二酸化炭素排出総量抑制のために自分の発展を犠牲にするべきだと要求する時に、道徳的に苦しい立場に立つことになる。「地球を守るためにこれまで通り苦しい生活を送らなければならない」と言う権利が自分たちにあるのか、と。