２００５年の中国中央テレビ年末恒例番組『春節聯歓晩会（春晚）』で、中国障害者芸術団のダンス作品『千手観音』は一夜にして有名になった。この作品上演の成功により、それまでより多くの人々がこの障害者による芸術団を知ることになった。その後、障害を持つ自分の子供をこの芸術団に入団させる保護者が相次いだ。芸術が子供たちの運命を変えると信じ、子供たちが人とは違った人生を送れることを期待したのである。

1２月３日の「国際障害者デー」を前に、本誌記者は北京市朝陽区高原街にある中国障害者芸術団を訪ねた。同芸術団に所属する３人の若いダンサーが、彼らの青春と夢を語ってくれた。

母にねだった誕生プレゼント

２００５年、春節（旧正月）。河北省衡水市のある一般家庭で、聴力障害を持つ1０歳の少女、魏菁陽さんと両親は一緒に中国中央テレビの『春晚』を見ていた。

「菁陽にも希望ができた。菁陽もきっとこの子たちのようになれる」。『千手観音』を見終わった時、菁陽さんの両親は互いに抱き合い、喜びのあまり涙を流していた。そして、出演者がみな自分と同じ聴力障害者だと両親から聞かされた瞬間、幼い菁陽さんの心にささやかな夢が生まれた。

正常な子供と同じように育てるために、菁陽さんが８歳の時から、両親は彼女を地元のバレエ教室に通わせ始めた。２００５年の誕生日、母親からどんなプレゼントがほしいか聞かれた菁陽さんは即座にこう答えた。「中国障害者芸術団に入りたい」。

娘の願いをかなえるため、菁陽さんの母親はとにかく試してみようという気持ちで中国障害者芸術団に娘の資料を送った。そして待つこと２年。２００７年７月、菁陽さんの母親は中国障害者芸術団の王晶副団長から北京へ面接に来るようにという電話を受けた。とんとん拍子に話が進み、この年、1２歳の菁陽さんは中国障害者芸術団に入り、正式な養成メンバーになった。

しかしそれからの集団訓練と生活は菁陽さんが憧れた通りではなかった。「手話が出来なかったので、他の人と全然コミュニケーションがとれませんでした。踊っている時に音楽のリズムを感じられなくて、当時は毎日１人でこっそり泣いていました。もうあきらめようと思いました」。菁陽さんは当時をこう振り返る。しかしその後、芸術団の先生が何度も励まし、助けてくれたおかげで、手話をマスターし、レッスンで突き当る困難にどう直面したらいいかを学んでいったのだという。そしてゆっくりと、菁陽さんは両親の元を離れても１人で生活できるようになり、成長していった。

２００９年７月、北京の保利劇院。菁陽さんはバレエ『眠れる森の美女』のソロを踊ることになっていた。菁陽さんは当時を振り返り、「あんなに大きな舞台でソロを踊るのは初めてでした。それに建国６０周年の記念公演だったので、とても緊張しました。うまく踊れないのではないかと思って怖かった」と話す。菁陽さんは、舞台に上がる前はずっと心臓がドキドキして、人生で初めての晴れ舞台を成し遂げられるかどうか不安だったという。「でも突然、芸術団に入った時に付き添ってくれた母が言った『強くなりなさい。常に自分を向上させる人になりなさい』という言葉を思い出したのです」。母の深い愛に満ちた言葉と先生や仲間たちの励ましのもと、1４歳の菁陽さんは初めての舞台で見事に踊りきった。「観客席から割れるような拍手が起こり、涙がたちまち頬を伝いました」。

「母の言葉をしっかり胸に刻んで、常に自分を向上させる人になります。もっと多くの知識を学んで、社会や私を助けくれた人に恩返しがしたい」。２０歳の菁陽さんは自分の将来について記者にこう語った。

いつでも希望を持ち続ける

「２０1４年の春節はキューバに公演に行きました。公演したのは標高が高いところだったので、ひどい高山病になりました。リハーサルでちょっと踊るとすぐにトイレに駆け込んで吐いてしまい、そのたびに酸素吸引しました」。芸術団の「ラテンクイーン」と呼ばれる祝悦さんの言葉に記者は強く引きつけられた。

２1歳のラテンダンサー、祝悦さんは黒竜江省チチハル出身。２００６年、祝さんの両親は彼女を中国障害者芸術団に入団させた。だが、手話ができなかったのと、知らない環境への恐怖のために、それほど経たないうちに、両親はまた祝さんを北京から連れ帰ることになった。