これらの「中所得国の罠」に陥った国を概観すると、大半はもともと存在する経済成長メカニズムと発展モデルの矛盾の露呈によるもので、人口ボーナスや土地資源の強みの喪失、もしくは産業構造の単一性や技術革新の乏しさが経済成長の弱さを招き、競争の強みを失わせる。
2020年に入り、人口ボーナスが徐々に消えていく状況を迎え、中国は発展が速いものの基盤が弱く、いまだに数多くの難題に直面している。例を挙げると、経済の構造は改善を要し、地域発展の不均衡は人口分布と所得の不均衡を招いており、貧困地域の規模も軽視できない。さらに1人当たりGDPは個人の平均所得と等しいわけではなく、教育、医療衛生、社会福祉、法治観念、精神文明建設などの民生にかかわる問題にも関心を払うべきだ。
もちろん、中国も絶えず自らハードルを乗り越えようとしている。過去1年、われわれは中国の科学技術力の台頭、ミドルエンド・ローエンド産業から多種多様な産業への漸進的発展、巨大な消費市場の勃興、日増しに拡大・開放されていく市場を目の当たりにしてきた。これらはいずれも経済発展の新たな突破だ。
それゆえに、GDPは一つの表象に過ぎず、その背後にある成長の原動力こそが一層重要な事柄だ。より重要なのは、中国における目下の経済発展の成果と課題に対し、はっきりと認識することだ。より注目すべきなのは、いかに社会産業構造、債務構造、住民所得構造を最適化し、中国経済の質と効率の向上を促すのに力を集中させ、質の高い発展を実現するかということだ。その他の事はいずれも時が来れば自然と成就する。
(盤和林・盤古智庫高級研究員)
「北京週報日本語版」2020年1月22日