「国家の切り札」
イノベーションの道を絶えず進み、努力を積み重ねてきた瀋鼓集団はついに成果が実を結ぶ時を迎えた。2011年、中国国家エネルギー局は神華寧夏煤業集団による年間400万トンの石炭間接液化プロジェクトにおける基幹設備の国産化に関する会議を開いた。会議は10万級空気分離コンプレッサーを国産化の重点と定め、この任務を瀋鼓集団に託した。そして、この重責を任されたのが、まさしく汪氏だった。当時、汪氏は既に20年におよぶコンプレッサー設計の経験を持つベテランエンジニアだったのだ。
空気分離コンプレッサーとは空気中の酸素と窒素を分離して取り出せる装置で、10万という数字は1時間ごとに10万標準立方メートルの酸素を生み出せることを指す。10万級空気分離コンプレッサーの技術は極めて複雑で、業界ではコンプレッサーの最高峰として「チョモランマ」と称される。かつてはドイツのシーメンスとマンの2社がこの核心技術を一手に握り、中国市場を完全に独占していた。大型空気分離コンプレッサーを自国で生産できないことから、多くの中国企業が高価な輸入設備をやむなく購入するのを幾度となく目の当たりにしてきた汪氏は、責任の重大さを深く感じていた。
加工中のコンプレッサーの部品(撮影・本誌記者張巍)
「大型空気分離コンプレッサーの開発は中国のエネルギー構造によるものです。中国は石炭資源が非常に豊富ですが、石油と天然ガスは少ないため、現在これらの輸入が多く、海外依存度が高いのです」と汪氏は語る。石油と天然ガスの海外依存から抜け出すには、中国のエネルギー構造を調整し、石炭の深加工を発展させることが必然的な選択だった。石炭の深加工としての石炭液化は膨大な量の酸素と水を必要とすることから、大量に酸素を作り出せる空気分離コンプレッサーは石炭液化に原動力をもたらす「産業の心臓」といえる設備だ。石炭液化は石炭から合成石油を生み出し、中国のエネルギーの安全を確保するだけでなく、石炭の燃焼効率を高め、そのクリーンな利用を実現する。
汪氏のチームは世界でも先進的な軸流式と遠心式の併用モデルを採用し、10万級空気分離コンプレッサーの模索と研究開発を始めた。数百回の研究と審議分析、調整会、50項目以上の課題の研究、300以上ものリスクポイントの評価、数百回におよぶ徹夜の奮闘で、汪氏のチームは軸流式と遠心式の併用技術を絶えず進化させ、アップグレードとイノベーションを推し進め、最終的に軸流8段・遠心2段の形で10万級空気分離コンプレッサーを完成させた。
2015年8月、瀋鼓集団の10万級空気分離コンプレッサーは営口市の生産試験拠点で行われた最大速度・最大圧力・最大負荷での性能実験で成功を収め、中国国家発展改革委員会エネルギー局による出荷検収を無事通過した。2018年4月、神華寧夏煤業集団で運用されて1年となるこの機械設備は、中国機械工業連合会などの機関・組織の専門家による鑑定に合格した。「国の重器」が瀋鼓集団のイノベーションの中で生まれたのだ。同社が10万級空気分離コンプレッサーの開発に成功した後、海外メーカーの製品価格が一挙に半額にまで下がったのは、「国家の切り札」としての力のあらわれだ。
10万級空気分離コンプレッサーの開発成功は瀋鼓集団が収めた新たな成果の一例に過ぎない。近年、100万トン級のエチレンコンプレッサー、1000万トン級の石油精製コンプレッサー、大型長距離パイプライン電気駆動コンプレッサーなどの分野で、瀋鼓集団は中核設備の国産化を実現した。革新的な瀋鼓集団は絶えず海外企業の技術独占を打破し、中国の機械設備を絶えず世界とシンクロさせている。瀋鼓集団が生み出す製品は、海外との競争において「国家の切り札」となっているのだ。
「北京週報日本語版」2019年9月24日