「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)はアジア太平洋地域経済一体化の試みとして国際貿易発展の新たな趨勢を体現するもので、合意は確かにたやすいことではない。しかし、TPPも多くの地域自由貿易協定の1つに過ぎず、その実際の影響に特別な点があるわけではなく、過度に誇張されるべきではない。
TPPの国際貿易成長促進効果は小さい。米国や日本などは世界の重要な貿易国ではあるが、大多数のTPP参加国の世界貿易における地位は際立ったものではない。TPP参加12カ国の2014年の2国間貿易総額は世界貿易総額の7%前後に過ぎず、全体として、TPPの世界貿易に対する促進効果は限られている。冷戦後の国際貿易発展を経験的に見てみると、本当の意味で世界貿易成長に重大な影響を及ぼすことのできた出来事は2つある。1つは1994年の関税及び貿易に関する一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド交渉終了、もう1つは2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟だ。この2つの出来事は統計的な意味で国際貿易額の大幅な成長を著しく牽引し、その上グローバル経済とグローバリゼーションのプロセスを促進した。TPPはつまるところ一部のアジア太平洋諸国間の地域貿易協定に過ぎず、EUや中国など世界の主要経済体が参加していないため、国際貿易に対する影響はおのずから限られてくる。
TPPが既存及び将来の地域経済貿易構造を変えることは難しい。アジア太平洋地域貿易の現状は、同地域各経済体の地理的位置、資源、経済水準、分業状況など複数の要素によって決まる。こうした要素は長期的かつ根本的なものだ。しかも、市場と資本は最終的に貿易と投資自体の利潤性にかかっている。TPPによるメリットが既存の貿易投資モデルの利益を超えることができなければ、市場と資本は既存の貿易投資形式を踏襲し、あえてTPPに付き従うことはないだろう。アジア太平洋地域の既存の経済貿易構造がどのようなものかに立ち返ってみると、中国が貿易と投資の中心の1つになっている。この構造は数十年に及ぶ世界経済分業と進化によって自然に形成されてきたものだ。国力が高まるにしたがって、アジア太平洋地域のバリューチェーンにおける地位がますます際立ち、地域経済関係構築力が絶えず強まって、TPPによる衝撃も相対的により小さくなる。