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北京週報>>特集>>斎藤文男氏のブログ  
◇日中の胡蝶「禍転じて福となれ」◇
 

◇地中に潜るホソオチョウの越冬蛹◇

ネット情報では、ホソオチョウの繁殖で在来種のジャコウアゲハが駆逐される恐れがある、と警戒する声が出ている。中には「反中ムード」の世論に乗じたものもあるようだ。知人の蝶研究家・石川佳宏氏によると、この2種は食草が同じなので、完全な競合種と言えるが、「ホソオチョウが危険というほどの脅威はない」という。また、ホソオチョウは変わった習性を持っていて、「越冬蛹だけはトゲ(突起)があり、これで地中に潜ることができる。このため、晩秋に野焼きをする地域でも、ジャコウアゲハの越冬蛹は焼かれてしまうが、ホソオチョウの蛹は翌年羽化することができる優位性がある」と石川氏は指摘している。

ホソオチョウは飛翔力が弱く、中国大陸から直接渡ってくることは考えられない。誰かが日本国内で放蝶したものが増えたらしい。私はたまたま中国・南京市の郊外でホソオチョウを初めて目撃し、興奮しながら写真に撮った。日本に戻り、ホソオチョウが増えていることを知って驚いた。

◇どのような影響があるのか、ないのか?◇

中国産の外来種の蝶が日本で分布を広げているのなら、早急に正確な実態調査による対策が必要だ。どこまで分布して在来種にどのような影響を与えているのか、いないのか。日本の各地にある「虫の会」「昆虫懇談会」「昆虫同好会」など民間の会と連携すれば、比較的容易に可能なのではないか。中国の民間機関とも連携しながら交流研究すれば、こじれている日中関係にも好影響を与えることもできるだろう。

ホソオチョウの越冬蛹の特性については、日本の蝶研究者の間でも知る人が少ない。中国ではほとんど知られていないことと思う。なぜ越冬蛹だけが地中に潜るのか。氷河期を生き延びた名残りなのか、天敵から逃れるためか、あるいは野焼きや焼き畑対策なのか。日中で共同研究すれば、日本で競合する胡蝶たちが、時々こじれるホモサピエンス同士の関係も「禍転じて福」としてくれるのではないだろうか。(写真は筆者撮影)

「北京週報日本語版」2015年5月7日

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