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中国の人々の血脈に流れる起業魂
本誌記者・植野友和  ·   2022-06-16  ·  ソース:北京週報
タグ: 起業;就職;中日交流
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それにしても、なぜ中国の人々は失敗を過度に恐れないのか。これはあくまで個人的な見立てだが、中国のビジネス界は日本に比べると、失敗が比較的許容されるからだと思う。中国には「東山再起」(東晋の政治家・謝安が職を退いて東山で隠居した後、再び大官に就いたエピソードにちなむ四字熟語)という言葉がある。まさにこの故事のごとく、一度会社をつぶした起業家が姿を消したと思ったら、別の都市で再び起業していたという話は結構聞く。ビジネスは時の運、失敗は誰にでもあるという大陸的なおおらかさに加え、本当に能力がある人には再起のチャンスがあってしかるべきといった実力主義に基づく考えが中国には根付いているように感じられる。

また、見切りの速さもこの国の人々の強みだろう。起業をしてみて脈がないと思ったら、ずるずると引っ張らずに会社をたたむ。それよりも違う業種に移るなり何なりした方が、よほど成功のチャンスがあるという思考である。根が真面目すぎる日本人は、厳しいと思っても最後まで諦めずに頑張ってしまう。それがプラスに働く場面も多々あるとはいえ、起業においては再起不能なダメージを負うことにもなりかねない。結局は国民性の違いであり、どちらが優れているという話ではないが、起業という点ではやはり中国の人々の気質が向いていると自分は考える。

ただし、これはあくまで一般論。14億の人口を有する中国にはありとあらゆるタイプの方がいて、起業ではなく安定を求める中国の人々も最近は増えている。「鉄腕飯」と呼ばれる食いはぐれのない職業の人気は高まっており、求人サイト・智聯招聘の「大学生就職力調査研究報告2022」によると、アンケートに答えた今年の新卒者のうち44.4%が希望の就職先として国有企業と回答し、公務員試験もブームとなっているという。

また、組織の中で自分を生かす方がよいと考える方だって大勢いる。一人一人が自分の持ち場で奮闘し、力を合わせてこそ大きな事業は成し遂げられるものである。ちなみに、自分がいま勤めている場所はまさにそのような考えを持つ人々が集まっていて、自己主張よりも献身を重んじる。こういうタイプの人々と一緒に働いている方が心落ち着くのは、おそらく筆者が日本人であるからだろう。それに自分のような歳になると、ITやコンサルタント業界でよく見かけるギラギラと野望に燃える人といると、正直言って疲れるのである。

とは言え、中国の人々が持つ起業精神は筆者にとって、やはりまぶしく見えるのも事実だ。それはおそらく、自分が骨の髄まで日本人であり、安定志向であることに関係しているかもしれない。自分が持っていないものほどうらやましく見えるのが人情というものである。

いずれにせよここ数年、新型コロナウイルス感染症や激動する国際情勢などさまざまな不確定要素がありながらも、中国の起業熱はいささかも衰えていない。きっとこれからも中国各地であまたの企業が立ち上げられ、その中から時代の最先端をゆくイノベーションが生まれることだろう。

「北京週報日本語版」2022年6月16日

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