2015年に日本を訪れた中国人観光客は500万人以上。彼らが日本で買い物に使った金額はおよそ1兆円を超える。中日民間交流は空前の盛況を呈したが、中日関係は好転も悪化もせず、特に見どころのない状態を脱していない。500万の中国人観光客が日本で毎日目にする新聞は 「中国牽制」を強調し、嫌中ニュースをあれこれと伝えている。テレビをつければ、安倍内閣が海上自衛隊を南中国海巡視に派遣するといったニュースが目に入る。中国を訪れる日本人観光客のほうも沈んだ気持ちだろう。中国のテレビは今も相変わらず抗日ドラマを大量に流している。特に、ドラマに出てくる皇軍士官が話す日本人が聞いても分からない「日本語」には、泣くに泣けず笑いに笑えない思いだろう。巨大な気まずい空気が中日両国の上空を覆っている。この気まずい局面は、民間交流で完全に変えることはできない。
中日両国は今どちらもモデル転換に直面している。中国は経済的に大きな成長を遂げたが、経済成長のスピードは2015年に明らかに鈍化した。この鈍化に対する中日の理解は異なっている。中国の7%前後という GDP成長率は、この1年に新たに創出した富が前年より1兆ドル近く多かったことを意味する。成長率が14%だった2007年に生み出された富と比較しても、今の中国の富を生み出す能力は弱まったのではなく、3倍近くも伸びている。しかし、日本には成長の鈍化しか見えていないようだ。彼らがより強調したいのは、中国の経済成長スピードが2007年当時と比べて半分しかないという点である。中国の持続可能な成長は大きな困難にぶつかっており、経済的にできるだけ中国と距離を取るべきだと考えている。
日本もモデル転換の過程にある。安倍晋三内閣は日本を「普通の」国にすることを目指している。多くの日本の政治家が普通の国を作ることについて語る時、その主な内容は海外に派兵し米国の発動した戦争に参加できるということだ。政治家とメディアが中国脅威論を煽り立てるのは、国民を納得させる必要があるからだ。戦後70年で、中国の脅威がこれほどの頻度で語られ、メディアが中国牽制をこれほど強く主張するのは、これが初めてだろう。日本が普通の国へと向かうに当たってまず必要なのは、そうした世論の方向と外交方針である。これまで日本は当てこすりを言うようにして朝鮮の軍事的脅威を煽り、まことしやかにソ連脅威論を口にしたこともあった。しかしそれも2015年にすさまじい規模と勢いを見せた中国牽制論とは比べものにならない。日本の政界トップはメディアに対し、中国は日本の「敵対国」だと公に語った。そうしなければ、日本国民に新安保法成立を容認してもらえなかったのである。
中日関係は2015年に好転することはできなかったが、好転も悪化もせず特に見どころのない状態で終わっただけでも、まあよかったと言うべきだろう。