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【40代から始める日本人の中国生活の記録】日本語教師をやってみた!
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本誌記者・植野友和 · 2023-02-09 · ソース:北京週報 |
タグ: 日本語;教育;中日交流 | 印刷 |
縁あって、昨年から中国の学生さんに日本語を教えている。と言っても、大学の教壇に立っているわけではなく、務めているのはオンライン講師である。
40年以上生きてきて、自分がまさか人に何かを教える立場になるとは想像すらしなかった。その思いはすでに何度も講義を行った今でも変わらず、教育専攻ではない自分が先生でいいのかという思いもなくはない。ところが、始めてみると意外なことに、筆者であっても日本語専攻の学生さんたちに伝授できることが多々あると気付かされた。
自分が受け持っているのは大学生以上で、日本語学習歴は1年未満の人から6年以上の人までまちまちだが、総じて言えるのは優秀であるということだ。大学入学までに受験勉強を勝ち抜いてきて、学ぶ習慣がしっかりと身についているため、こちらから真剣に学習するよう促す必要は全くない。日本語の教材があれば、誰もがそれを見て予習復習をしっかりやるし、授業も真面目に受ける。その反面、学習内容が教科書にのっとったカリキュラムに偏りがちな傾向もある。筆者のように仕事上の経験をベースに教える講義は学生さんたちにとって興味深いのか、とても前向きに講義を受けてくれる。
また、自分が先生を務める意義として最も大きいのは、身も蓋もない話だが筆者が日本語ネイティブであるということだ。最近、新型コロナウイルス感染症対策が最適化されたが、それ以前は日本語を現地で学びたいと思っても留学するすべがなかった。日本語専攻の学生さんにとって、会話力を伸ばしたり発音をネイティブに近づけたりするには、日本人と話すのが何よりも手っ取り早い。先生がみんな自分みたいな者ではまずいだろうが、優秀な講師陣の中に、ネイティブ枠として一人くらい筆者のような変わった講師がいる分には、アクセントとしてありなのかもしれない、というのが現在の実感だ。
そして最後の一点は、中国語から日本語への翻訳においては、日本語ネイティブに強みがあり、将来翻訳を仕事としたいと考えている方に教えるべきことがあるという発見である。重ねて言うが中国の学生さんはとにかく優秀で、修士以上ともなれば非常に難しい日本語表現を身につけた学生がザラにいる。中国の人々にありがちな勘違いとして、日本人なら誰もが上手に日本語の文を書いて当たり前というものがあるが、実際にはそんなことはない。人によって得手不得手は当然あり、企業のリリースや企画書、大学のレポートなどを見ていると、なぜこれほど日本語が下手なのかと思うものも少なくない。筆者が受け持つ学生には、それらを上回る読み書きの能力を備えた方もいる。ただ、そうは言ってもやはり彼らにとって日本語は外国語である以上、通して読めばどこかしら不自然さはある。それを指摘し、アドバイスするのが自分の務めであり、これは非常にやりがいがあると同時に、筆者にとっても大きな学びがある。
まず第一に、真剣に学ぶ学生さんたちと接していると、自分もまだまだ勉強が足りないことに気付かされる。講義を通じて自分は日本語を教える代わりに、彼らのポジティブな姿勢をかがみとして、自らを戒める機会を得ていると感じている。
第二に、人に何かを教える責任がいかに重いかということも、自分にとって大きな学びである。当たり前だが、学生さんたちに教えた内容を、講師が守れていなかったらそれは矛盾以外の何物でもない。文章を書いたら必ず読み返して単純ミスをなくしましょう、語学は根気と継続力が何よりも大事なので学びを止めないようにしましょうといった言葉は、そのまま自分にも当てはめなければならない。
また、オンライン講師の仕事を通じ、日本語専攻の学生さんにさまざまなタイプがいることにも気付かされた。例えば、アニメや漫画をきっかけに日本語を学び始めたいわゆるオタク系は、とにかく上達が早い。最近面白い漫画について学生さんと普通に語れて、『チェーンソーマン』でどのキャラが好きか、みたいな話で盛り上がるのは実に楽しい体験だ。語学は読み書きならコツコツ努力ができる人、会話ではコミュ力が高い人が有利という固定観念を持っていたが、最近はどうもそう簡単な話ではなさそうである。
これらの日本語専攻の学生さんたちは、一人一人が日本と中国の相互理解と友好の担い手である。彼らの多くは将来、仕事や人生の中で学んだ日本語を生かし、両国の民間交流を推し進めることだろう。いや、もしかしたら公務員となり、直接的に友好事業に携わる人だっているかもしれない。その意味では、オンライン講師としてはまだまだ未熟であっても、自分も何かしら貢献できているのかもしれない。いや、そうに違いない! と強く思わないと、とてもではないが先生という立場のプレッシャーに押し潰されてしまいそうなのである。
いずれにせよ、こうやって中年になってからも新しいことに挑戦するのは、大変ではあるが楽しい経験だ。学生さんたちの期待に背くことのないよう、微力を尽くしてもうしばらく先生業を続けてみたいと思う次第である。
「北京週報日本語版」2023年2月9日
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