スタジオで展示されている「囍」入りのお菓子の箱

赤い。

部屋中が、赤一色に包まれている。

天井から赤いカーテンが垂れ下がり、赤いテーブルクロスの上には赤と白のキャンディーが置かれている。玄関から中に入ると、テーブルや椅子、スーツケース、ビスケットの箱など、空間のいたるところにユニークな「囍」という漢字が見られる。

北京郊外の古い衣料品工場の敷地内にあるこの工房は、彼女の発想によるアートカルチャー「囍コレクション」の収集家である王艶平さんのスタジオだ。

スタジオで展示品を紹介する王艶平さん

「世界音楽の都」として知られる黒竜江省哈爾浜（ハルビン）市に生まれた王さんは、1973年に北京舞踊学校に入学した。1979年に卒業後、彼女は相次いで北京舞踊学校バレエ団、セントラル・バレエ団で働き、研さんを積むため米国にも留学した。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「ドン・キホーテ」「ジゼル」など多くの作品で主役を務めたこともあるという。

白鳥の湖」を主演する王さん（写真右側）

1999年、友人と北京の潘家園骨董市場へ行ったとき、王さんは偶然にも「囍」と出会った。「その日、『囍』の文字が書かれた翡翠のペンダントをたまたま目にしました。翡翠は特に好きではなかったのですが、二つの『喜』が合わさったこの字が、まるで二人が踊っているように見えて、なんとも言えない特別な感じを覚えたのです。そうして、『囍』こそ最もシンメトリーで美しい漢字の一つだと思うようになりました」。その瞬間から、「囍」にまつわるアイテムを収集する王さんのアート活動が始まった。