デザイン会社「GKインダストリアルデザイン研究所」が今週発表した訃報は、日本をはじめ、世界中のデザイン界に衝撃を与えた。日本で最も歴史ある最大手の工業デザイン会社・GKインダストリアルデザイン研究所の創始者・榮久庵憲司氏が8日、洞不全症候群で死去した。享年85歳。
■榮久庵憲司氏とは何者なのか?
原研哉、深澤直人、川久保玲、山本耀司などの世界中に名を轟かせている日本のデザイナーと比べると、そこまで知名度はないかもしれない。しかし、これが榮久庵憲司氏の作品と我々の距離が遠いということにはならない。逆に、榮久庵憲司氏は戦後の日本社会で初めて「モノの民主化」や「美の民主化」を提唱したデザイナーであり、最も生活に身近なところで、現代の社会生活を変化させた人物だ。
榮久庵憲司氏は、1929年東京に生まれた。1945年に父が原子爆弾の投下に遭って亡くなったため、父の跡を継ぐために僧侶となる。1955年に東京芸術大学美術学部図案科を卒業し、2年後にGKインダストリアルデザイン研究所を創立する。亡くなる直前まで、GKデザイングループの会長を務め、この50年間の多くの重要なデザインが榮久庵憲司氏やそのグループによって生み出されてきた。