中国の食品品質の
安全状況

 

二、食品監督管理システムと

監督管理作業

食品の安全性を保障するために、中国政府は全プロセスで監督管理を行う理念を確立し、予防を主とし、根源の生産地から管理する方針を堅持し、「全国が統一的に指導し、地方政府が責任を負い、各部門が指導し協力しあい、各方面が共同で行動する」監督管理の枠組みを作った。中国の国情に基づいて、2004年国務院は『食品安全監督管理の一層の強化に関する国務院の決定』を公布した。これは、一つの監督管理段階は一つの部門によって監督管理される、という分業原則に基づき、段階を分けて監督管理することを主とし、品種監督管理を補助とする方式を採用し、食品安全監督管理部門の職能をさらに整備し、責任を明確にしたものである。この決定により食品安全監督管理は4段階に分けられ、農業、品質検査、工商、衛生の4部門で実施されることとなった。これにより、初級農産物生産段階の監督管理は農業部門が責任をもち、食品生産加工段階の品質監督と日常衛生監督管理は品質検査部門が責任をもち、食品流通段階の監督管理は工商部門が責任をもち、飲食産業と食堂などの消費段階は衛生部門が責任をもち、食品安全の総合監督、組織協調、法により重大な事故に対処するのは、食品薬品監督管理部門が責任をもち、輸出入農産物と食品監督管理は品質検査部門が責任をもつ、こととなった。これにより食品の安全監督管理の各部門の分業が明確になり、密接に協調しあい、互いに連携し、厳密かつ完全な監督管理システムが形成されたのである。

食品安全監督管理を強化するという長期的かつきわめて困難な任務は、必ず現在に立脚し、長期計画を策定し、根本と副次的な部分をいっしょに改善し、根本の改善に力を入れ、健全な監督管理制度と長期的に効果あるメカニズムを確立しなければならない。中国政府は根源から食品の品質安全を厳格に管理し、食品監督管理の各項目の基本制度を完全なものにし、食品安全監督管理を強化することを堅持するものである。

(一)農産物の品質安全活動を強化する

中国は2001年に「無公害食品行動計画」をスタートさせ、野菜の中の毒性の強い残留農薬と畜産物の中の「赤身精」汚染を抑制することに重点的に取り組み、国民の関心が最も高い毒性の強い農薬や獣医薬の規則に違反した使用とその残留が基準を超えた問題の解決に力を入れた。農業に使う生産財、農産物の生産、市場参入許可という3段階の管理をキーポイントとし、田畑から市場に至る全プロセスの監督管理を推し進めている。定期的な監視測定の展開に力を入れ、各地で品質安全意識を高めて管理監督の責任を着実なものにさせた。また基準化の推進をキャリヤーとし、品質の安全な農産物の生産と管理レベルを高めることが可能となった。現在、農産物の品質安全保障システムは日増しに完全なものとなり、監督管理能力が一歩一歩強化され、農業基準化レベルがいちじるしく向上し、農産物の品質安全の確保を目指すサービスや管理、監督、処罰、応急を五位一体とする活動メカニズムはしだいに形成されつつあるのである。

(二)食品の品質安全性に関する市場参入許可制度の

確立と厳格な実施

中国政府は2001年に「食品品質安全市場参入許可制度」を導入した。この制度は3つの内容からなる。第一は生産許可制度であり、すなわち食品生産加工企業に対し、原材料の工場導入への管理、生産設備、加工プロセス、製品基準、検査の設備と能力、環境条件、品質管理、貯蔵・運送、包装標識、従業員など食品品質安全を保証する必要な条件を備えることを求め、食品生産許可証を獲得した企業が食品を生産、販売できるものである。第二は強制検査制度であり、すなわち企業は食品が検査され合格したあと出荷、販売できるという法律と義務を履行することが求められる。第三は市場参入許可標識制度であり、すなわち企業に対し合格食品にQS(品質安全)標識を貼ることを求め、食品の品質安全を保証すること。段階的に実施するという原則に基づき、2007年上半期までに、生産企業に合計10万7000枚強の食品生産許可証を発行した。許可証を授与された企業の食品の市場占有率は同一種類の食品の90%以上に達した。同時に、食品生産許可証を獲得した企業に対して監督管理を強化し、2007年6月末までに、基準に達しなかった食品の生産許可証1276枚を撤回し、取り消し、取り上げ、抹消した。国家品質検査総局は、食品生産企業が生産許可証を獲得した進度に合わせ、回を分けて、生産許可証を獲得した製品の生産企業リストを公表し、時期を分けて未だ生産許可証を獲得していない、QS標識のない食品が市場に参入して販売することを禁止し、消費者に使用しないよう警告した。

(三)食品品質の国家監督抜き取り検査力を強化する

中国政府は食品の抜き取り検査を主な方法とする監督検査制度を実行している。この制度が1985年に確立されて以来、たえず強化され、重点を強調し、効果を上げている。近年らい、重点的に乳製品、肉製品、お茶、飲料、食糧・油など日常消費の主要な食品を抜き取り検査し、重点的に生産集中地域の企業、零細作業場に対する抜き取り検査を行い、重点的に食品の微生物、添加剤、重金属などの衛生指標をチェックし、また品質が安定していない零細企業に対し重点的に追跡調査を行った。抜き取り検査頻度数が増えるにつれ、抜き取り検査がカバーする範囲が拡大し、「一種類の製品を抜き取り検査して一業種を整頓する」という目標を基本的に実現した。2006年から2007年上半期まで、合計7880社の企業に対して1万1104回の食品に国家監督抜き取り検査を行った。同時に、抜き取り検査の中で問題が見つかった製品と生産企業に対して、整頓・改革、処罰の度合いを高めた。第一に公告制度を厳格に実行したこと。抜き取り検査の中で品質問題が重大だった355社の企業の355回の製品を公表した。同時に「優秀企業、良質製品、優良ブランド」を積極的に宣伝し、「中国ブランド」を獲得した240社の製品と「国家検査免除」称号を獲得した548社の製品は、消費者から大きな賞賛を浴びた。第二に、整頓・改革制度を厳格に実行したこと。不合格製品の生産企業に対して、厳格な整頓・改革を促し、定期的に再検査し、再検査が不合格な場合は、生産停止・厳格な調整を命令し、調整期間が終わった時点で再検査しそれが再び不合格だった企業に対しては営業許可証を取り消した。第三は処罰制度を厳格に実行したこと。食品の中に不純物を混入したりニセものを使用したり、ニセものを本物に見せたり、不良品を優良品とした場合、生産停止を命令し、違法に生産した食品は没収し、その手段が悪質な場合は司法機関に送検し法律上の責任を追究した。

(四)零細な食品製造作業場に対し、特定項目の監督

管理を強化する

中国に存在する地域格差、都市部と農村部の格差などから、零細な食品生産加工作業場に対して行う監督管理は長期的で極めて困難な仕事である。今のところ、10人以下の食品生産加工作業場は、食品の品質安全監督管理の重点対象であり、また難点である。伝統的な低リスクの食品加工に従事する作業場に対して、「監督管理、規範、指導、消費者優先」の活動原則を堅持し、一方で閉鎖、生産停止、併合、製品転換などを通じて、市場参入の条件を満たすようにさせ、もう一方で監督管理措置を強化し、食品安全上の事故の発生を防止している。近年らい零細企業と作業場に対し4つの面の監督管理を重点的に実施してきた。第一は基本条件を改造し、要求に達しない場合は生産させない。第二は販売範囲を制限し、作業場が生産加工した食品の販売範囲を郷鎮行政区域を超えさせず、マーケットやスーパーマーケットに参入させない。第三は事前包装することを厳格に制限した。作業場で生産する食品は市場参入資格を獲得する前に体裁のよい包装をすることを認めず、ごまかして市場に混入することを防止している。第四は公開承諾制度である。作業場は、自らが非食品原料を使用せず、添加剤を濫用せず、回収食品を原料とせず、製品をマーケットやスーパーマーケットに出回って販売せず、承諾区域でのみ販売し、最も基本的な安全衛生要求に達した食品を生産することを保証すると、社会に対して承諾しなければならない。厳しい取り締まりにより、2006年の作業場に対する平均抜き取り検査合格率は70.4%に高まった。2007年6月末までに、すでに5631社を取り締まり、8814社を強制的に生産停止処分にし、5385社を整頓・改革により市場参入の要求に到達させた。

(五)食品安全区域監督管理責任制を推し進める

「三員四定、三進四図、両書一報告」を主な内容とする食品安全区域監督管理責任制を確立し実施した。「三員四定」とはすなわち、人を定め、責任を定め、区域を定め、企業を定めることにより、品質検査部門の食品安全監督管理員が郷鎮(事務所)に行って食品生産加工企業の具体的な監督管理活動を行い、郷鎮政府協力管理員は協力して食品品質安全監督管理活動を展開し、社会情報員が各種の食品品質安全違法情報を収集し提供することを定めるものである。「三進四図」とはすなわち、村に入り、世帯に入り、企業に入り、調査し内情を把握し、食品生産加工企業に関する保存書類を作り、企業変化動態図、食品業種分布図、監督管理責任実行図、食品安全警告図を制定し、動態の監督管理を実施するものである。「両書一報告」とはすなわち、政府が責任書に調印し、企業は承諾書に調印し、品質検査部門が定期に食品安全報告を出すことである。2007年6月末現在で、全国31の省、自治区、直轄市は合計1万6030カ所の食品安全監督管理責任区を確立し、食品安全専任監督員2万5346人、政府協力管理員7万2474人を招聘し、社会情報員10万6573人を招聘した。2006年、各クラスの品質検査部門は食品生産加工企業に対し合計90万回の巡回検査を行った。

(六)食品流通分野の監督管理を強化する

「緑色消費を提唱し、緑色市場を育成し、緑色通路を切り開く」を主な内容とする「三緑プロジェクト」を深く実施し、現代的な流通組織形態と経営方法を推奨し、チェーン店経営と物流配送に力を入れて発展させる。経営・販売企業が商品の仕入れ検査と納品、生産許可証・伝票請求制度、仕入れ販売台帳と品質承諾制度、および市場創設者の品質責任制を、着実に実行することを進める。市場巡回検査制度を全面的に着実に実施し、食品品質監視・観測制度を完全なものにし、不合格食品の市場からの撤去、リコール、廃棄、公表制度を厳格に実行する。家畜・家禽屠殺業の管理を強化する。地域限定を突破し、品質優良で、信頼度が高く、ブランド・知名度が高い食品を全国に流通させることを推奨する。住民のコミュニティーの食品の加工流通サービスシステムを健全にする。食品安全マークと包装管理を強化し、力を集中して食品の偽包装、偽マーク、偽ブランドなどの印刷物の製造を取り締まる。

(七)飲食などの消費段階での食品安全監督管理を強

化する

飲食の衛生は食品安全の重要なポイントである。中国政府が飲食業衛生監督管理面で行った主な活動は以下のようである。第一は飲食衛生に対しての監督管理を強化し、『飲食業と集団食事配送部門衛生規範』を制定し着実に実施させ、食品衛生監督管理の細分化等級別管理制度を実施し、飲食段階の監督管理を強化した。第二は飲食業や食堂が全面的に食品衛生監督管理の細分化等級別管理制度を実施することを推し進め、食品汚染に対する監視・観測と飲食による疫病発生に対する監視・観測システムの建設を完全にし、それを強化する。第三に、違法犯罪行為に対して厳しい打撃を与え、重大犯罪事件を取り締まり、即時に社会に通報する。不完全な統計によると、衛生部は2006年通年で、延べ204万余カ所に及ぶ各種の飲食部門や学校集団食堂を検査し、延べ4万5000件に及ぶ不法な食品生産経営の嫌疑を有する事件を取り締まり、延べ2万5000余カ所の衛生許可証を持たない生産経営部門を取り締まった。第四は学校の衛生活動を強化し、全国の学校の食品衛生、飲用水の衛生、伝染病予防治療特定項目の検査活動を展開し、食物中毒と腸の伝染病を予防治療した。第五は食品の危険性に対する評価を行い、食品安全の事前警報と評価情報を科学的に発表した。

(八)食品品質安全特定項目の整備を全面的に展開する

一部の地区、一部の食品の偽造粗悪品の問題を解決するため、食品品質安全区域の整備を全面的に展開し、「百千万プロジェクト」を組織し実施した。それは確定した重点区域、重点加工場、重点加工業者およびその加工食品をめぐって、食品安全監督管理ネットを構築し、基準と検査・測定などの技術的な作業を強化し、企業に対する技術面でのサービスを強化し、食品業界協会の組織化を推し進め、法律執行と偽商品に対する摘発・撲滅を強化し、偽造粗悪品を製造・販売する一連の地域的な問題を解決することであった。同時に、工商、品質検査部門は継続して食品に対する法律執行と偽商品に対する取り締まり度合いを強化し、食品の品質安全を主軸にすえて生産加工のルーツを際立たせ、特定項目の法律執行と偽商品に対する摘発・撲滅の行動を展開し、非食品原料で食品を生産し加工することと食品添加剤を濫用する違法行為を厳しく取り締まり、生産許可証と営業許可証がない偽造粗悪品を製造する悪の巣窟に対して厳しい制裁を加えた。2006年、品質検査部門が食品違法事件4万9000件を立件して取り締まり、押収した偽造粗悪品の総額は4億5000万元に達した。工商部門が食品安全に対して行った特定項目の取り締まりの中で、合わせて560万人の法律執行人員を出動させ、重点食品市場1万6000カ所を検査し、延べ1040万の食品経営業者を検査し、営業許可証がない15万1800の業者を取り締まり、4629業者の営業許可証を取り消し、6万8000件の偽造粗悪品を製造・販売する事件を取り調べ、処分し、48件を司法機関に送検して処理し、1万5500トンの不合格食品を市場から撤回させた。

(九)リスク警報と緊急対応メカニズムの構築を強化する

全国食品安全リスク警報と緊急事態対応システムを設立し、食品の生産加工、流通、消費段階におけるリスクのモニタリング・コントロールを積極的に展開し、動態収集と食品安全の情報を分析することを通じて、食品安全問題の早期発見、早期警報、早期コントロールと早期処理を初歩的に実現した。完全で有効な緊急対応メカニズムを確立し、リスク情報の収集、分析、事前警報と緊急対応を含め、即時報告、迅速対処、科学的判断、妥当な処理まで一貫して行う。

 

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