時永明　(中国国際問題研究院副研究員)

朝鮮半島は現在膠着状態に陥り、しかも主要な関係者はこの膠着状態をどうしたら破れるかについて困惑し、なすすべがないと感じている。そのため、朝鮮半島の先行きは、対峙状態の中で正と負のエネルギーがどう増減するかで決定づけられるだろう。正のエネルギーが増え続ければ、問題解決の方法はなんとか見つかる。逆に、負のエネルギーがため続けられれば、衝突の日が来ることは避けがたいだろう。  

負のエネルギーをためる米国の対朝政策 

　不幸なことに、最近朝鮮半島問題では負のエネルギーを持つ出来事が多く見られる。韓国の聯合ニュースによると、韓国国防部は２０１４年１２月２９日、韓米日３カ国が「朝鮮の核・ミサイルに関する情報を共有するための覚書」を締結し、同日正式発効したと報じた。覚書によれば、韓国と日本は米国を通じて朝鮮の核とミサイルに関連する情報を共有する。この覚書は防衛的な協力に見えるが、米国がこの覚書の締結を推進したのには深い意図がある。  

米国国防総省によれば、この覚書締結の原動力となったのは、朝鮮が２０１２年４月の観閲式で公開したＫＮ -０８ミサイルの実物模型である。米国防総省が２０１４年３月議会に提出した「朝鮮の軍事力と安全保障戦略に関する年次報告書」によれば、同ミサイルの射程距離は５５００キロ以上で、米本土を脅かすことができる。だが同時に報告書は、朝鮮が同ミサイルの発射実験を行っていないことから、「朝鮮がこのミサイルを兵器とするという情報の信ぴょう性は低い」ことも認めている。言い換えれば、米国も朝鮮が公開したものがおそらく張子の虎だということを知っている。しかしいずれにせよ、朝鮮のミサイル模型は、米国が東北アジアにおいて戦略的配置を推進するために絶好の口実を提供することになった。  

東北アジアにおける米国の戦略は、ミサイル防衛システムを次第に配備することと、米日韓軍事協力メカニズムを構築することである。この二つの戦略は互いに補完し合っている。ミサイル防衛システムは日本と韓国を米国の作戦システムに組み入れることができ、日本と韓国に対する米国のコントロールに役立つ。一方の米日韓軍事協力はミサイル防衛システム運用にも米国の地域作戦システム運用にとっても有利であると同時に、日韓の軍事的独立性を制約することもできる。  

実は、米日韓３カ国が「朝鮮の核・ミサイルに関する情報を共有するための覚書」を締結する間に、米国は京都府に２基目のＡＮ /ＴＰＹ-２レーダーを配備していた。このレーダーは移動式弾道弾迎撃ミサイル・フェーズドアレイレーダーシステムで、本土と戦区のミサイル防御を行う高性能センサーであり、現在米軍の最先端ミサイル防衛レーダーの１つである。米国の弾道ミサイル早期警戒レーダーシステム、海上配備 Xバンドレーダーや早期警戒衛星システムとともに、ミサイル防衛システムの「目」として、各国の弾道ミサイル発射に対する監視と追跡を行っている。  

朝鮮のミサイルに対する米国のこうしたアクションは、実のところ自国を核心として行われており、このシステムにおける日韓協力の意義はそれほど大きくない。しかし米国はすべての可能な機会を利用して、日本と韓国という歴史的因縁が絶えず再燃する２つの国を一切の軍事協力に引き込んでいる。その目的が朝鮮問題に限られないことは言うまでもない。米国のグローバル弾道弾迎撃ミサイルシステムを視野に入れてみれば、米国が着眼しているのが依然として「大国の戦略競争の中でいかに戦略的優位を保つか」だということがはっきり見て取れる。  

翻って朝鮮半島を見てみると、米国は朝鮮との対話再開を急いではいない。朝鮮が核廃棄を宣言していないことは米国が対話を拒否する絶好の理由となっているが、米国の提示するいわゆる対話の前提条件こそが対話の扉を閉ざすネックである。米国が韓国にＴＨＡＡＤミサイルを配備しようとしていることが、米国の真意をよりはっきりと示している。ＴＨＡＡＤミサイルの技術性能では、米国にとっても韓国でミサイル迎撃の役割しか果たせないし、また韓国にとっても朝鮮のミサイル攻撃を防ぐ効果は高くない。米国が同ミサイルを韓国に配備することに熱心なのは、朝鮮のミサイルに反撃する意味もあるが、それよりもさらに重要な目的は、このシステムのレーダーが持つ遠隔探査機能を活用して中国を戦略的に抑制することだ。そのため、現在の朝鮮半島における米国の戦略は、事実上、軍事的冷戦強化なのである。それはおのずと朝鮮半島問題における負のエネルギーになっている。