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南中国海の「仲裁手続」、フィリピン新政権への負の遺産に
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· 2016-06-12 |
タグ: 南中国海;フィリピン;政治 | 印刷 |
フィリピンの司法大臣を務めたベテラン海洋法専門家はこのほど、フィリピン当局に対し、中国を相手として提起した南中国海に関する仲裁手続を一時停止し、次期政権に選択の余地を残すよう呼びかけた。この騒ぎをめぐってこれまでにフィリピン国内で上がった最も理知的な声と言える。
中国・フィリピン間のいわゆる「南中国海問題」の経緯を振り返ると、中国とフィリピンの間に何か問題があるというよりも、フィリピン内部の一部の政治家が私益のために政治的な道具をこしらえているだけであることがわかる。これらの政治家は、自分の「卵」を焼くために、国民全体の「家」を燃やしてしまうことをいとわないのである。
歴史的な原因から、フィリピン国内では今でも、解決すべき問題が大量に残されている。フィリピン国内の地方政権は依然として、現地の有力な家族の手中に握られており、事実上の豪族政治が政治されているのである。アキノ3世の在任中、フィリピンの年間平均経済成長率は6.2%に達した。だが政府の腐敗や家族政治、貧富の差、高い犯罪率といった現状は、フィリピンの民衆の満足からは程遠く、希望の抱けるものともなっていない。
フィリピン国内のさまざまな問題の根源は、この国のほとんどの土地がいくつかの有力家族の手中に握られていることにある。矛盾のこの根源は何も秘密ではない。フィリピンのほとんどすべての大統領は「経済的平等」や「土地改革」などのスローガンを口にするが、政権に就いてしまうと自分と家族の利益を守ることしか考えなくなる。アキノ3世も上院議員だった2009年には土地改革を叫び、自家の荘園から改革に着手すると語ったが、実際に俎上に載せられた「アキノ家の荘園」はアキノ家の領地全体の2%に過ぎなかった。アキノ家の利益独占は現在、国内の強い不満を引き起こしつつある。
「外部の問題」をこしらえて内政の失敗を隠すのは、責任感のない政治家の取る常套手段と言える。アキノ氏が2011年末から南中国海問題でしばしば中国を挑発するようになり、最近では仲裁手続という騒ぎに至ったのも、背景にはこうした原因がある。国内の民族主義を利用すれば、民意を少なくとも一時的にはやり過ごすことができる。
アキノ3世は、やっとのことで撤退させた駐フィリピン米軍を再び招き寄せようとしている。フィリピンの国家主権から言っても、現実的な地域の安全から言っても、このような振る舞いはフィリピンにとってメリットはない。米国のアジア太平洋戦略と過度に結び付けられることは、フィリピンが将来の潜在的な衝突に巻き込まれる可能性を高める。こうした常軌を逸した振る舞いも、アキノ家と海外との利益関係を考えれば理解できる。
アキノ3世が任期満了を前にして「南中国海仲裁手続」という騒ぎを起こしたことは、次期政権にとっての大きな落とし穴となっている。もしも新政権が敷かれたレールに乗り、暗黒への道を走り続けるなら、内政や外交の面で前政権がはめた枠組にしばられることとなる。そうなれば前政権の既得権益は保たれ、それによってもたらされる問題は次期政権が担わなければならなくなる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年6月1日
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