▽効率と匠の心はぶつかることがある
品牌連盟(北京)諮詢株式有限公司の王永会長は西側諸国の匠の心について、「スイスは腕時計で有名だ。スイスの職人たちはかつては教会の大時計を手がけ、その後小さな時計や腕時計へと発展を遂げた。これは歴史の偶然というものだが、スイスの職人は大時計を作る時と同じように細心の注意を払って小さな時計や腕時計を作ってきた。これが脈々と続いてきた伝統だ。日本は資源が乏しく、浪費は許されないため、何事にも細かさを求めるようになった。ドイツとイタリアのプロフェッショナルの精神も匠の心であり、職人は自分の職業に誇りをもっている」と述べた。
だが職人たちはこれまでずっと歴史の表舞台にいたわけではない。工業化とグローバル化による衝撃を受けて、精巧な手仕事の技術が減少し失われつつある。塩野さんは著書「失われた手仕事の思想」で、伝統を引き継ぐ職人の置かれた厳しい環境を紹介している。
効率重視の現代社会が匠の心とぶつかるのはある程度やむを得ない。匠の心を尊重する日本でさえ、評価は分かれる。工業社会に突入した日本では、大量生産と高効率を達成した大企業しか生き残ることができず、市場競争の荒波の中で中小企業が次々に倒産するという現実がある。匠の心が技術に全身全霊を注いで、他の点をまったく顧みないなら、不景気の時代にはそぐわないものになる。匠の心が細かい点にばかり注意を向け、「簡素であることが最も美しい」という原則を忘れていると考える人もいる。
だが匠の心が工業大国で重視されていることには疑問の余地がない。日本の機械式時計の製造や精密加工などの分野では、多くの職人が十分な保護とふさわしい尊敬を受けている。経済という大きな環境が不景気で、日本の中小企業の倒産が相次ぐ中、日本のプロフェッショナルたちは中小企業を保護し、日本の「中核技術の発展パワー」を保護することを呼びかけている。