財産をためる巳の刻は、午前９時から１１時とされる。言い伝えによると、この時間に蛇が人を襲うことはなく、じっと草むらに隠れている。そのため、巳の刻に蛇が配されている。

中国の上古時代には、人々が蛇を恐れ敬い、多くの氏族で蛇をトーテムとしていた。古代の地理書『山海経』に、「軒轅の国――人面、蛇の身体」という記述があるが、軒轅は言い伝えによる中国の始祖・黄帝である。中国の創世記神話において、人類の祖先とされる伏羲と女豢は、漢代の画像石（絵画を刻んだ石）の絵の中で、いずれも人の頭と蛇の身体、または人の頭と竜の身体を持っていた。中国の竜は、蛇を身体としてそれが変化し発展したものである。現在の人々は、巳年の人を「小竜」年の人と呼んでいる。「人蛇合一」の神話伝説は原始社会に生まれたが、それはかつて人と蛇がある意味で「調和」していたことを表している。専門家は、それが巫術と関係していると分析している。

民間剪紙（切り紙）では、よく見られるのが黄河流域に伝わる「蛇が兎に巻きつく」というデザインである。民間のことわざには「豊かになりたければ、蛇が兎に巻きつく（剪紙を貼る）」とある。蛇は男性の象徴で、外で働き、機知に富み、よく金を稼ぐと言われ、兎は女性の象徴で、内（家）を守り、従順で、よく財産を貯めると言われる。巳年と卯年の生まれの人同士は、もっとも相性のよい配偶者の組み合わせである。蛇に対する崇拝には、生殖崇拝が暗喩されている。また、配偶者の組み合わせのタブーもあり、「蛇と虎（寅年生まれ）は互いに傷つけあう」「蛇と猪（亥年生まれ）は、互いに衝突する」などと言われる。民間においては時に、蛇と蠍、ムカデ、ヤモリ、ヒキガエルを「五毒」と称する。端午節になると、各家では「虎が五毒を鎮める」という年画や剪紙を貼りつけている。

「北京週報日本語版」2013年1月31日