劉偉波氏は、手動ドッキング初成功の背景には主に3つの要因があったと考える。
1つは、「操縦者」劉旺飛行士の操作レベルが高く、心理的資質が高かったことだ。「衆目の中で、劉旺飛行士は少しも気後れすることがなかった。今回のドッキングの精度、時間、誤差は、地上訓練の時とほとんど同じだった。手動ドッキングは『宇宙空間で糸を通す』ようなものだ。宇宙飛行士の視覚と作業の一致性、操作の精密性、心理的な安定性に対する要求は極めて高い。この動作について、宇宙飛行士は地上シミュレーション訓練を1500回以上積んでいる」。
2つめは、3名の宇宙飛行士の息がぴったり合っていたことだ。「シミュレーション訓練では、十分に話し合い検討した上で一人一人の長所を発揮することができる。しかし宇宙ではもっと細かい部分で、例えば視線1つ、動作1つにおいても、3人の呼吸の合ったチームワークが頼りだ。劉旺飛行士がドッキングを行っているその時、景海鵬飛行士はすばやく各種の指令を出し、さらに調光もしなければならない。劉洋飛行士も大きな役割を果たした。『天宮1号』からの切り離しが始まり、2人が『神舟9号』軌道モジュールでの作業に当たっていた時は、劉洋飛行士が指令の伝達を担った。またドッキング時には、劉洋飛行士は正常飛行マニュアル、ドッキングマニュアル、故障処置マニュアル、宇宙船操作指南という分厚い4冊の飛行マニュアルを持ち、万一故障となればどうすればよいかを示すことになっていた」。
3つめは、国産ドッキング機構の信頼性の高さである。「『神舟9号』と『天宮1号』のドッキング機構は、目下のところ中国で最も複雑な宇宙機構だ。操縦は人の技能によるものだが、ドッキングの基礎となるのは製品の信頼性だ。その点、今回は4回目のドッキングであり、宇宙船と目標機のドッキング機構は完璧だったと言ってよいだろう」。
劉偉波氏はさらに次のように語った。「宇宙飛行士たちの働きは非の打ち所がなかった。特に2度目の飛行となった景海鵬飛行士は、『神舟9号』が『天宮1号』から切り離されドアを閉める最後の瞬間まで実験機内に残り、『天宮1号』内の物を整理することを忘れなかった。『天宮1号』で何日か生活し、『家』に対するような思い入れが生まれていたのだろう」。
有人宇宙飛行プロジェクト総設計師の周建平氏はこう語る。「ドッキングは宇宙ステーション建造のために必ず掌握しなくてはならない重要技術だ。手動ドッキングの成功は中国がこの技術を完全に掌握し、宇宙ステーション建設の基本能力を備えたことを示している」。
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