ユネスコのイリーナ・ボコヴァ事務局長はかつて、文化遺産は地域や人種、民族を超えて人類の魂をつなぐ絆であり、平和の力だ、と述べている。紛れもなく、世界遺産に登録申請すること自体が、文化が世界規模で継承され伝播するための有力な実践なのである。
シルクロード
「シルクロード」を例に取ると、ユネスコは1988年の「シルクロード」総合学術調査開始以来、国際的学術調査を何度か行った。シルクロードは26カ国を経由する。今回世界遺産に登録されたのはそのうち3カ国に関する部分だけだが、2006年に複数の国による「シルクロード」包括的世界遺産申請プロジェクトが正式にスタートして以来、プロジェクトに加わった国は12カ国に上る。言語だけ見ても、中国、カザフスタン、キルギスの3カ国が調印した協議文書で用いられた言語は5つに及んでいる。
今回の3カ国による世界遺産登録申請成功は、言語や体制メカニズムなどの差異を超えたもので、中国の他国の文化への評価・寛容性、開放、協力の姿勢を世界に示しただけでなく、世界遺産の文化精神をも体現した。これは中国初であっただけでなく、世界遺産史上においても革新的な出来事であった。
シルクロードと大運河が交流のルートを切り開いたことで、各文明の発展は孤立したものではなくなった。これはまさに、世界遺産委員会の提唱する多元的文化アイデンティティと国際協力そのものだ。
「明月出天山,蒼茫雲海間。長風幾万里,吹度玉門関」(明月天山を出ず、蒼茫たり雲海の間、長風幾万里、吹き度る玉門関)。1200年余り前、唐代の大詩人、李白はしばしば西方へと思いを馳せた。
そして今、中国は「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海のシルクロード」構築という重要構想を打ち出し、中国も、ユーラシアも、ないしは世界各国も、遥か遠くを見渡してただ待つ必要はなくなり、実際に協力を行えるようになった。
世界文化遺産の精神を継承する新たな陸路、文化的アイデンティティから生まれた新たな水路は、文化の違いを超えた交流と意思疎通という使命を帯び、文化で経済貿易を牽引し、文化で国のイメージを築き、文化で世界をつなぐことをいっそう求められている。
「北京週報日本語版」2014年6月23日
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