~未来から現在の「私」に書いた返信~
斎藤文男(元・南京大学日本語学部専家)
学生が10年後の自分の姿を予測して書いた作文に、私は10年後の学生に代わって返信を書いた。卒業後、10年余りが過ぎた今、現実の生活は作文の通りになっているだろうか。私が“代筆”した返信を読みながら、学生たちの今の生活に思いを馳せた。
☆「幸福とは何か」について報告☆
≪KK君。10年後の私あての手紙で、「幸福とは何か」について10年来の考えを報告してくれました。自分だけの幸福から、多くの人が幸福になることが必要だと自覚した君は、10年後の私を超越していると言えます。大学院を卒業し、外交官になって、多くの人の幸福を追求しようとした10年後の君に会ったら、また新たな発見があるかもしれませんね。10年後それを聞かせてもらうのを楽しみに待っています。≫
学生時代の楽しい思い出は,卒業後何年経っても忘れられない(2006年9月27日、南京大学鼓楼校舎構内で)
☆「何も分からないまま卒業することないよう」忠告☆
≪LSさん。10年前のあなたは、「何も分からないまま、大学を卒業することのないよう」10年後の私に忠告してくれました。過ぎ去った年月は瞬時に思え、未来は空に弓矢が向かって行くように果てしなく長いように思えるものです。
しかし、現在は過去から見れば未来です。見方を変えれば次元を超越することも可能です。現在と未来の時の流れは、ゆっくりと着実に刻まれているだけです。どのようにしたらよいかの判断をする余裕は十分にあります。よりよい道を選択しながら前進してください。≫
☆「心の満足感、社会奉仕の充実感」それが成功☆
≪LG君。10年前より今は便利で豊かにはなりましたが、心の豊かさや社会全体に潤いがなくなりつつあるように思えます。日本が世界第2の経済大国となったころ、経済優先や利潤だけを追求することに反省の声があがってきた時とよく似ています。10年前の君が「自分で興味ある仕事をやって、心の満足感、社会奉仕の充実感を得られるのが成功と言える」と指摘している通りです。
農村問題の改革は長期的な視野が必要です。日本の都市と農村の格差是正の経緯を参考に、中国に合った方法でゆっくりと改革してください。≫
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