~未来から現在の「私」に書いた返信~
斎藤文男(元・南京大学日本語学部専家)
卒業が3カ月後になった2003年の今頃、4年生の作文の授業で「10年後の私への手紙」という題を出した。10年後の2013年、自分の生活がどのようになっているか、を予測してもらおうという狙いだった。10年間が過ぎた時、自分宛ての手紙を再び読み、一昔の来し方を考えてもらえれば、という期待もあった。ボートを漕ぐように、後ろ向きになって過去を振り返りながらも、前進してほしいと思い、出題した作文だった。学生はクラスの22人全員が、自分の10年後の姿を思い浮かべて書いた。私は作文を添削、採点しながら「10年後の未来の私」に代わって800字ほどの返信を書いて全員に返却した。私が書いた返信の要旨を通じて、学生の10年前の夢をいくつか紹介したい。
☆いい男性と出会い、仕事と家庭を両立させたい☆
≪HSさんへ。私は2013年のあなたです。南京大学を卒業するとき、あなたは私に手紙を書きました。いい男性に出会って結婚し、可愛い子供を生んで育児のかたわら、仕事を続けて家庭と仕事を両立させたいと思っていました。
新芽の季節は毎年繰り返し、4年間の学生生活はあっという間にすぎていった。(2006年3月21日、南京大学の元浦口校舎構内で)
10年前、あなたは自分のことを「楽観的で明るい人」と分析していました。その性格はいまでも変わりませんよ。親孝行をしたいという気持ちも変化していません。この心掛けがあれば、お母さんが広い部屋に住みたいという夢を実現させることができます。すべてが実現しているかどうかを、私は約束することはできません。それは、これからの10年間、あなたの努力次第だからです。≫
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