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北京週報>>特集>>斎藤文男氏のブログ  
◇日本の中の中国、中国の中の日本◇
 

◇9割前後が「相手国に良くない印象」◇

日中国交回復の交渉はようやくまとまり、「日中国交ここに始まる」「永遠の友好めざし共同声明」「戦争終結を確認」(1972年9月29日毎日新聞)と新聞の一面で大きな見出しの活字が並んだ。それから42年後。2014年9月9日に発表された言論NPOの「第10回日中共同世論調査」によると、日中両国民の感情や認識は国交回復以来最低となった。

「相手国に良くない印象を持っている」は、日本93.0%(前年90.1%)、中国86.8%(同92.8%)と、互いに9割前後の人たちが相手国に悪いイメージを持っている。中国では日本に対する悪いイメージが前年より6ポイント減っているが、日本では逆に3ポイント近く増えている。

「相手国に行きたいか」では、「行きたくない」が日本70.4%、中国72.6%と7割以上の人が「相手の国に行きたくない」と答えている。「行きたい」と答えたのは、日本29.6%、中国22.5%と3割を下回った。決死の覚悟で国交を回復したのに42年後には、相手の国のイメージが悪くなり、7割の人たちが相手の国に行きたくなくなってしまった。

◇相手国の言語と気付かず両国で使う漢字◇

なぜこのようになってしまったのか。これは「相手国に対する理解が足りないからだ」と思い、講演で私は相互理解促進の必要を訴えた。相手国を理解するといっても、ことさら中国や日本について学習しなくとも、双方の国の言葉に相手国の言葉が、そのまま使われているものがあることを知るだけでも相互理解は進むと思う。

例えば日本語として使用している次の言葉は、すべて中国語から移入された漢字をそのまま使用している。

☆①箸(はし)②牛蒡(ごぼう)③蚯蚓(みみず)④蒟蒻(こんにゃく)⑤蒲公英(たんぽぽ)⑥白菜(はくさい)⑦厨房(ちゅうぼう)⑧西瓜(すいか)⑨冬瓜(とうがん)⑩南瓜(かぼちゃ)⑪豆腐(とうふ)⑫納豆(なっとう)⑬胡麻(ごま)⑭極楽(ごくらく)⑮醤油(しょうゆ)⑯帽子(ぼうし)⑰椅子(いす)⑱暖簾(のれん)⑲屏風(びょうぶ)⑳葡萄(ぶどう)㉑茄子(なす)㉒算盤(そろばん)

カッコ内の平仮名をパソコンで打つとすべてこれらの漢字が表記されるが、現在の中国語でも同じ漢字を使っている。逆に日本語をそのまま中国語に取り入れた中国語の中の日本語は次の通りである。

☆①革命②哲学③倶楽部④取消⑤手続⑥必要⑦経済⑧主義⑨動員⑩基礎⑪階級⑫解放⑬了解⑭美術⑮基地⑯任命⑰生産⑮胃潰瘍⑯物質⑰想像⑱消費⑲意識⑳政党㉑資本㉒作品

日本語の「箸」は中国語では「筷子」だが、中国でも元来は「箸」だった。大河を渡る船の中で「箸」(zhu4)は「住」(zhu4=止まる・風がやんで船が動かなくなる)と同音で縁起が悪いため、竹を残しその下に「速い」を意味する“快”を付けた、といわれる。(中日辞典第2版・小学館)

「反面教師」という日本語も、1957年に毛沢東が演説の中で初めて使った造語で、私も知らなかったが、多くの日本人は「反面教師」が中国語から来たものとは意識していないだろう。同様に中国人の多くが「革命」「経済」などが日本語に由来するとは思わず中国語として使っている。日本語を専門に学んでいる私の学生でも、中国語の中の日本語を説明すると「え~っ!」と驚く。普段何気なく使っている文字でも、日中の歴史的に長く深い付き合いがあったことを考えれば、相手国へのイメージもかなり変わるのではないだろうか。

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