◇双方の良い所を見て相互に理解・尊重を◇
3年前の東日本大震災の時、HKさんは東京の会社にいた。20数階建のビルの8階に事務所があった。縦と横揺れで怖くて死にそうだったが、誰もキャーキャーと声をあげる人はいなかった。ほとんどの交通機関がストップしたため、多くの人が歩いて自宅に戻らなければならなかった。途中のスーパーで水や食べ物を買う時でも、順番を守り誰も買占めする人はいなかった。被災地で救援物資をもらう時も、秩序を守って受け取っていた。このように大きな災害時でも、日本人は冷静さを失わずマナーや秩序を守ることが、多くの海外のメディアから称賛された。
雑然とした賑わいにほっとする中国人観光客も多い。(東京浅草の雷門で)
災害時だけでなく、日本の公共施設や自然環境などはどこでもきちんと整備されている。これは日本人が何事においても、規律正しく振る舞い、きちんとルールを守る習慣ができているからだろう、とHKさんは思う。電車の乗り降りでも、降りる人が先に降りてから乗る。それも必ず並んだ順番に従って乗っている。電車の中では大声で話をする人もいないし、携帯電話をかける人もいない。
何もかもが整然としているが、HKさんにはちょっぴり不満もある。
インド人の友人と一緒に北京に出張に行った時、トウモロコシを食べながら市内を歩いていた。電車の中でも大声で笑ったり話をする人がいた。人ごみの中で他人にぶつかっても双方ともにあまり気にせず、「気楽でいいなあ」と友人はつぶやいた。マナーやルールをあまり守らないのは中国人の良くないところだが、すべてが整然としている日本を離れて、たまに中国の空気を吸うと、なにかほっとしたような開放感をHKさんは感じる。
そして、「中国人の配慮の足りなさを称えているのではなく、大陸気質として細かいことを気にしないことに注目したら、中国人の良さに気付くかもしれない。」と訴える。さらに、日本人が、中国人のマナーの悪さや思い遣りの足りないところ、傍若無人など良くないところだけを見るのではなく、大らかで明るく、積極的で社交的な部分にも目を向けてほしいという。中国人も、日本人の融通の利かない冷淡さや、抗日戦争ドラマなどからイメージされる悪い日本人像ではなく、日本の環境の素晴らしさ、日本人の優しさ、親切さ、辛抱強さ、公共マナーの良さなどに注目してほしい、と訴える。
「日中双方で相互の文化を理解・尊重して、寛容の心でお互いの良いところを見るようにすれば、ぎくしゃくも少なくなること」を確信し、「双方の架け橋になれるようこれからも努力していきたい」と、HKさんは将来を展望している。
(写真はすべて筆者写す)
「北京週報日本語版」2014年8月13日
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