◇オブリガートで相互に助け合う姿◇
紫金草合唱団の団員は、東京、大阪、奈良、広島、福井、石川、茨城、宮城の各地の団員60人で訪中団を結成、3班に分かれて南京にやって来た。私も日本に帰国してから団員となり、9カ月ぶりで南京に帰ってきた。勤務していた南京大学を昨年夏、退職して日本に戻った時は、40℃近くの熱い時季だった。久しぶりに見る南京は、街路樹の新芽が目に眩しく広い道路も清潔で、初めて訪問する都市のような清々しい印象を受けた。
「民間交流の灯を消さないために」(藤後博巳・名誉団長)、「こんな時だからこそ」(大門高子・団長)。国同士が不仲になっている時、民間の草の根交流をもりあげようと、同合唱団10回目になる海外公演を南京市で実行した。13日夕方までに60人が南京市内のホテルに到着したあと、結団式を行った。
紫金草合唱団と地元南京市民合唱団が一緒に合唱(南京大虐殺記念館脇の花園前で)
翌日は公演会場の「金陵図書館」で午前中リハーサルを行い、午後から本番となった。紫金草合唱団が組曲「紫金草物語」を披露した後、江蘇省ラジオ局合唱団が「中国の歌」を演奏した。その後、「大海啊故郷」を双方の合唱団が一緒に歌った。この中で、紫金草合唱団は中国語でメロディを歌い、江蘇省ラジオ局合唱団がハミングで伴奏、メロディを補足するようにオブリガートで盛り上げた。この演奏方法はこの歌には元来ないものだが、指揮者の本並美徳さんが編曲したものだ。オブリガートは1回しかなかったが、私は日中双方の国が相互に助け合っている姿を、このハーモニーの中に見た。日本と中国の文化の根は共通している。相互に助け合えばこんなに見事なハーモニーを奏でることができることを、多くの人に聴いてほしいと思った。さらに続けて、中国側合唱団のメロディに日本側がオブリガートを付け、最後に双方で一緒に歌って盛り上げて終わる方が、感動はさらに深まると思った。演奏が終わった後、本並さんにその感想を伝えたら、検討してみる、とのことだった。このオブリガートだけでも、今回の公演は大成功だと私は思った。
紫金草合唱団と一緒に合唱する南京市民合唱団員(南京大虐殺記念館内平和の塔脇で)
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