~先住民族の悲哀と日米開戦の歴史乗り越え~
斎藤文男(前・南京大学日本語学部専家)
太平洋の真ん中にある米国・ハワイ州の人たちは、ゆったりとしながらも活き活きとした生活だった。信号のない交差点で、横断している歩行者が一人だけであっても、数台の車はその人の横断が終わるまでじっと待っていた。急がない歩行者は手で合図して車を通過させたあと、ゆっくりと歩いて道を渡って行く。タクシーの運転手は、お客さんに自ら名前を名乗り握手を求めて乗車を歓迎した。チャイナタウンで中華料理店の店員は、混んでいる店内でもお客の要求に笑顔で即座に応対するサービス精神に溢れていた。多民族社会のハワイでは、互いに多様性を認め合いながら明るい社会を共有していた。そこには先住民族の悲哀と日米開戦の歴史を乗り越えた歴史があった。
ゆったり活き活きしたゆとりを感じさせるワイキキ海岸の残照
◇異なる価値観を互いに認め合う◇
2月上旬、機会があって米国・ハワイ州に行った。州都・ホノルルのあるオアフ島の緯度は、中国・海南島とほぼ同じだが、数年前の同じ時季、海南島に行ったときより気温は低かった。ハワイ州の人口は約136万人(2010年)。人口構成は日系人、フィリピン系、中国系などアジア人が38.6%、ドイツ系、アイルランド系、イギリス系など白人24.7%、混血23.6%など多民族社会である。観光客は年間約784万人(2012年)と人口の5.8倍もの人がやって来る。
宿泊したホノルル市内の繁華街では、観光客が四六時中出歩いていた。歩行者優先の交通マナーは、バス、タクシー、自家用車のドライバーに徹底している。世界のリゾート地ならではことだと感心した。多民族社会の中で異なる価値観を互いに認め合いながら、世界各地からのお客さんに楽しんでもらおうとする思想の表れなのだろう。
このサービス精神は、市内ダウンタウンにある中華料理店でも見られた。春節の休暇中だったので、店内は中国語を話すお客さんで満杯だった。いくら混雑していても、従業員は笑顔を絶やさずお客の注文に応じていた。 店員の爽やかで楽しそうな仕事ぶりは、市中心街のステーキ専門のレストランに行ったときにも感じられた。「私はイタリア系なので、英語は少しなまりがあるかもしれませんが…」と、中年男性の店員が断りながらオーダーを聞いていた。働く喜びが態度に表れ、それがお客さんへのサービスにもなっている。私はそのサービス態度が嬉しくなって中年男性と思わず肩を組んで記念写真を撮ってしまった。
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