~中国伝来「七草粥」の囃子研究をヒントに~
斎藤文男(南京大学日本語学部専家)
禽流感(鳥インフルエンザ・H7N9型)が、季節の移り変わりとともに流行が収まりつつある中、5月10日、上海市の警戒態勢が解除された。感染源はニワトリなど食用の生きた鳥の飼育場である可能性が高い、としているが確認されたわけではない。このまま警戒機運が弱まり、感染経路の究明や対策が放置されれば、新たな型のウィルスが再び流行する恐れもある。この際、禽流感対策に対する従来の観点をがらり変えて、日中文化面からの研究と対策を提言したい。それは中国伝来の「七草粥」の囃子の文言に禽流感対策のヒントがあるかもしれないからだ。
◇ 今回の感染者は133人、うち37人が死亡◇
今回の禽流感(H7N9型)は、上海市で2人が感染し死亡したことが3月31日に発表された。その後、中国本土の2市8省と台湾を含め感染者が133人、うち死者は37人となった。4月20日以降、新たな感染者が確認されていないほか、458人の濃厚接触者に対する医学観察がすべて解除されたことから、上海市の警戒態勢が解除された。その後、広東省を除く7省と北京市で警戒態勢が解かれている。(6月2日現在=日本・外務省海外安全ホームページ)
新たな感染者がなく、警戒態勢が解除されたといっても、禽流感が収束したわけではない。世界保健機関(WHO)では、動物の保有宿主、感染経路など多くの事項が不明だとしている。このまま放置すれば、新しい型のウィルスが再流行する恐れは十分にある。
1997年、香港で初めてヒトへの感染が確認されたH5N1型は、2003年11月以降、約10年間でアジアを中心に世界15カ国、628人が感染し、うち374人が死亡している。(2013年4月26日現在=日本・厚生労働省調べ)
これらの感染源はいったいどこなのか。どのような経路で感染が拡大していくのか。ヒトからヒトへの感染はあるのか。これらのことはまだ解明されていない。ヒト以外の動物からヒトに感染したケースがこれまでなかったので、考えが及ばなかったのかもしれない。現代の医学でも解明が難しいのなら、分野が全く異なる文化・風習の観点から考察してみてはどうだろうか。幸いなことに日本と中国は、隣接する国としては世界でも例がないほど長い文化交流の歴史がある。日中双方で今、この文化交流の歴史を振り返り研究すれば、禽流感に対する新しい手掛かりが得られるかもしれない。
|