◇日中文化、相互理解の手掛かりに◇
園内には「観桜亭」の四阿(あずまや)や日本式の「鳥居」、「蹲(つくばい)」、中国の「螭首(ちしゅ)」などがあると、案内の看板に日本語訳が書かれていた。日本人にとって「観桜亭」や「鳥居」の意味は分かるが、「蹲」「螭首」の漢字にはルビもなく理解できない人が多いのではないだろうか。中国語で書かれた「蹲」の部分は「洗手鉢」とあった。「手を洗う鉢」の意味だが、「手水鉢(ちょうずはち)」の意味を中国語に訳したのだろう。手水鉢には種類があって、しゃがんで手を洗うのに使うものは「蹲踞手水鉢(つくばいちょうずばち)」と呼ばれている。
手を洗うことは、水浴みによって身体の汚れを洗い清めるとともに、心の罪やけがれを祓うことができるとする禊(みそぎ)を簡略化したもので、寺社に手水鉢が備えられている。茶道でも、茶室という特別な空間に向かうための結界として、客が体を低くして蹲踞(つくばい)で手を清める習わしがある。現在、日本の大阪府立体育会館で大相撲春場所が開かれているが、相撲の試合前に行わる立会いでも、相手に敬意を表すため蹲踞(そんきょ)の姿勢をとる。膝を折って爪先立ちで踵(かかと)の上に尻をのせて腰をおろす。膝を開いて体をまっすぐに起こした状態で相手を見る。剣道でも試合前には同様の姿勢をとることがある。「蹲」一字からもさまざまな日本の伝統文化を知ることができる。
中国の「螭首」は、伝説上の角のない竜のこと。旧時の建築や工芸品の装飾によく用いられたという。お茶は元来中国から伝えられ、日本に移入されて日本独特の文化「茶道」に昇華された。これらの説明が少しでもあれば、日中文化の相互理解を深める手掛かりになるのではないかと思った。
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