~南京・紫金山麓 梅花に代わり桜花満開~
斎藤文男(南京大学日本語学部専家)
寒さの中で凛として開花した梅から、春を満喫する桜の季節に——。南京市郊外にある紫金山ふもとの明孝陵風景区内の「梅花山」に隣接する「桜花園」の桜の花が16日、満開となった。中国が原産地の梅の花は、春の花々が固くつぼみを閉じているころ開花し、春の香りをいち早く届ける。主役を桜花に譲ったころには、そっと結実して実を膨らませる。万地の春を競い合う中日の花の季節は、梅から桜にバトンタッチされた。
◇桜花3000本の下でひと模様さまざま◇
今年の梅花山の梅は例年より10日ほど早く咲き始め、2月下旬には満開となった。約350種類、4万本の梅の木がある「梅花山」では、2月20日に「南京国際梅花節」が開幕し、例年通り数十万人の花見客で賑わった。3月上旬には最高気温が摂氏25度を超える日もあり、桜の花も開花を促され、梅に代わって「桜花園」の桜が満開になった。今月末までが見ごろ。
青空を覆い尽くすように咲いた桜の花
「桜花園」は日本・福岡県各界の人たちから募金を募り、江蘇省人民代表大会の協力で1995年に建設された。2012年に面積が60亩(4ヘクタール)に拡大され、園内の桜の木は3000本になった。多くは樹齢10年以内の若い桜の木だが、本格的な春の訪れとともに一斉に開花し訪問客の目を楽しませている。梅花ほどの香りはなくとも“香雲”と形容されるように、根元から見上げる大きな桜の木は、青空を覆い尽くすように香りを含んだ白い雲のように見えた。
満開になった桜の木をバックに、若い女性が笑顔でVサインをして記念撮影をしていた。公園内の遊歩道では若い男女が顔を近づけて談笑しながら、桜の花に語りかけるようにしながら歩いている。
若い父親に肩車されて得意顔の息子を見てにっこりほほ笑む母親。80歳近い夫婦が仲睦まじく手を取り合って、互いに足元を気遣いながら散策する年配の夫妻。桜の花はさまざまなひと模様を引き寄せている。南京の梅花山に来て梅の花を観賞する日本人。桜花園で桜の花を愛でる中国人。中国の素晴らしさ、日本の美しさを互いに称賛する心が通い合っている風景に思えた。
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