◇日中の接客態度の違いに驚く◇
今年、私が卒論指導した学生は「中日のサービスの比較について」をテーマにした。彼女は3年生の時、1年間日本に留学して、デパートやレストランなどどこに行っても、日本のサービス業の接客態度が、中国とはまったく違っていることを体験して非常に驚いた。彼女はこの驚きを日本からメールで、度々私に報告してきた。私もその都度返信を書いて日本の状況を説明した。
日本の食品売り場でただ試食しただけでも、店員は笑顔で「ありがとうございます」とお礼をいう。衣服売り場でも、試着した後で買わなくとも、店員は嫌な顔をすることなく、「またのご来店をお待ちしております」と丁寧に応対する。
中国では考えられないような接客態度に、学生は「中国から多くの文化を移入した日本で、サービス業がこのように発達したのに、中国ではなぜ遅れているのか」「このようなサービスに対して日本人はどのように感じているのか。他の中国人も私と同じように感じているだろうか」などいくつかの疑問を感じて、卒論で書きたいと私に相談してきた。ならばその疑問を、日本人、中国人に直接聞いてみよう、と指導した。
当初は20人程度にインタビューする予定だったが、相手とこちら側の時間や場所がなかなか折り合わず、アンケートをすることになった。
日本と中国とで両方のサービス業の接待を体験した対象者を探すのが大変だったようだった。それ以上に、有効回答のあった日中合わせて32人の回答をまとめてグラフや表にする作業にかなりの時間がかかった。私はアドバイスだけであえて手伝わなかった。卒論は4年間の大学生活で、最後で最大の自己表現の場だ。4年間学んだ力を総動員して対処する課題である。このような仕事は社会に出てからいくつも経験するだろう。社会に出てから私は何も手伝うことはできない。学生時代にその力をつけてほしい。そう考えあえてあまり手伝わなかった。
他の学生の論文にも、グラフや表など多くのものが使われていたが、ほとんどは政府機関や各種団体がまとめたものだった。結果がまとまって表現されているので、手軽にすぐ使える。私が担当した学生は、自分でアンケートの質問項目を作り、アンケートを依頼して集め、それを自分でグラフにして表現し、結果を分析した。
「これだけのアンケートをまとめて分析し、グラフにするのがこんなにも大変な手数がかかるとは思いませんでした。」
書きあげた後、学生はしみじみと話していた。
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