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【40代から始める日本人の中国生活の記録】孔子のふるさとに行ってきた!
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· 2023-03-28 · ソース:北京週報 |
タグ: 孔子;文化;中日交流 | 印刷 |
学生の頃、自分の中で漢文と言えば退屈な授業ナンバーワンといった印象で、はっきり言って苦手な科目だった。ところが人間不思議なもので、当時は全く関心を持てなかった中国の古典に、この歳になって面白さを感じている。例えば『論語』を例に挙げると、かつては単なる修身訓とばかり思っていたが、腰を据えてじっくり読むと、学びに対する姿勢や人としてあるべき姿など、深い叡智が詰まっていることに気付かされる。日本が史書に現れるよりもはるか昔、中国の春秋時代に生きた孔子の言葉は今も色あせることなく、現代を生きるわれわれに非常に大きな示唆をもたらしている……ということをなぜ学生の時に理解できなかったのか、筆者にとって痛恨の極みとしか言いようがないが、生きているうちに中国古典の素晴らしさを知ることができただけマシだと前向きに考えるようにしている。
さて、そんな自分がひょんなことから、孔子のふるさとを訪ねる機会に恵まれた。山東省曲阜市、かつて魯の国があった地である。ここは人口65万人ほどの(中国としては)小さな都市だが、学問がとても盛んなことで有名だ。自分は昨年からオンラインで翻訳の講義をしているのだが、受講生のリストに目を通していると、毎回のように曲阜師範大学の名前を見かける。しかも、同大学の学生さんはとてもやる気に満ちあふれていて、みんな優秀だ。さすがは中華文明を代表する哲学者・思想家の一人、孔子を生んだ土地柄と思うわけだが、そのような学びを重んじる伝統が今も息づいているのは、現地の人々の世代を超えた努力のたまものである。
現地でまず訪れたのは、孔子が生まれたとされる尼山である。孔子の誕生年は紀元前552年または551年と言われ、今から2500年前にこの一帯がどのような様相だったのかは想像する術もないが、現在は自然いっぱいの風光明媚な場所となっており、孔子の学問を受け継ぎ、研究を行うさまざまな施設が整備されている。
また、曲阜市内には孔子とその末裔たちを祭った孔子廟、かつての邸宅である孔府、墓地の孔林がある。ちなみに自分は孔子ゆかりのさまざまな建築群を見学している最中、ここがユネスコ世界遺産に登録されていることに、あろうことか現地で気付いた。何しろ中国は広大で、名勝や古跡も数え切れないほど多い。何となく行った先が実は世界遺産だった、などという嬉しいサプライズが起こり得る国なのである。
それらの名所も素晴らしかったが、曲阜で最も心に残ったのは、町のあちこちで『論語』の一節や有名なフレーズを目にすることだった。そもそも高速鉄道駅の出口からして、「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」と書かれた看板が掲げられている。大人になってから『論語』をじっくり読むようになった者としては、これは嬉しい。今回、かなり余裕のある旅程だったため、町中で『論語』の言葉にふと出会った際、その中に込められた深い意味を考えることもしばしばだった。
特によく見かけたのは、筆者が好きな『論語』の一節、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」である。ここからは筆者の個人的な見解になるが、日本は「和をもって尊しとなす」という言葉があるように和の心を重んじる一方、その「和」は『論語』の中で言うものとは概念が若干異なるのでないかと考えている。自分は中国で暮らしているとはいえ、日本で生まれ育ったせいか、つい周りの空気を読んで押し黙ったり、大勢の意見に同調してしまう癖がある。これは『論語』の教えに従うならば、正しい姿勢ではないはずだ。「和して同ぜず」とは、自分の意見を言わないということを意味しない。むしろ安易に付和雷同することなく、主張をする中で調和を生み出すのが大事であると説いている、と筆者は思う。意見が異なる者同士でも交流や議論を重ね、その上でハーモニーを作り出す。むろんその場合、ケンカ腰では話し合いにならず、調和が生まれないため、お互いの違いを認め合う姿勢、そして何よりも「礼」をもって接することが大事だーーこのように考えていくと、『論語』の短い一節の中には本当に多くの学びがあることに気付かされる。
『論語』に限ったことではないが、何事も頭で分かった気になるだけでは意味がなく、実践こそが何よりも重要である。『論語』の教えはシンプルだが、本気で実行に移そうと思うとこれほど難しいものはない。2500年以上前に生まれた中国の知恵を、いかに自らの血肉とし、己の人生に生かしていくか。歴史の風情に満ちた美しい町並みを巡りながら、そんなことを考えさせられた有意義な旅だった。
「北京週報日本語版」2023年3月28日
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