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【40代から始める日本人の中国生活の記録】中国の教育熱
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本誌記者・植野友和 · 2022-09-05 · ソース:北京週報 |
タグ: 教育;受験;中日交流 | 印刷 |
中国教育部のデータによると、2021年の中国における大学進学率は約57.8%で、全ての高等教育機関の在学生数は4430万人を突破した。2012年の数字では進学率が約30%であったことから、ここ10年間の間に2倍近く増えたことが分かる。その背景にはさまざまな要因があるが、中でも重要なのは経済発展により人々の暮らしが豊かになり、教育を受けられる層が増えたこと、そして中国の人々の教育熱が挙げられるだろう。
その熱の入り方は、日本人である自分からすると驚くべきものだ。まず、教育熱心な親御さんにとっては、自分の子どもの受験戦争は3歳から始まる。中国では就学前教育が盛んであり、子どもの可能性を伸ばすためにさまざまな習い事をしたり、お父さんお母さんが漢字やアルファベットを教えたりする。そのような習慣があるためか、中国には幼い頃に楽器を習っていた、バレエをしていたという若者が普通におり、大人になって以降もそれらを趣味としている人が結構いる。
たとえば以前、中国人の同僚から突然メッセージが送られてきて、「社内で音楽会をやるのだけど、バイオリンを弾けますか?」と聞かれて驚いたことがある。自分で言うのも何だが、筆者は音楽を聞くだけならともかく、自分で弾いたりするような文化的素養のある人間ではない。それでも聞いてきた人からすれば、子どもの時に就学前教育で触ったことくらいあるのでは、という読みがあったのだと思う。
むろん、就学前教育だけでなく、学校に上ってからも中国の親御さんはわが子の教育のためにお金と時間、労力を全力でつぎ込む。進学校に入れるためにその学区内にある「学区房」と呼ばれる家に引っ越したり、毎日の送り迎えを家族全員で支えたりといった話は日本でもしばしば報じられるところだ。
2021年7月、中国は「双減」政策を打ち出した。その狙いは、義務教育段階の子どもの過度な宿題の負担と学校以外での学習の負荷を減らし、地域ごとの教育格差をなくすことにある。私の周囲の子どもを持つ同僚たちの話によれば、政策が実施されて1年以上になり、子どもたちの宿題が確実に減っただけでなく、週末には趣味や興味のあることに打ち込んだり、遊んだりスポーツをしたりして過ごす時間が増え、それに伴って学区の問題もかなりの程度の解決が見込まれるのだという。
日本との違いでは、学習内容の難しさも挙げられる。かつて上海に留学していた頃、自分が今学んでいる中国語はどのくらいのレベルなのか、書店の教科書コーナーに行き、確かめたことがある。そこで分かったのは、大人である自分が学んでいる中国語は、こちらの小学校3年生の国語の教科書と同等であるという事実だった。
自分が所属していたクラスのカリキュラムは、外国人留学生向けとしては一番高度なもの。それでもお子様レベルなのかとショックを受けたわけだが、クラス担任の先生に聞くと中国の小学校3年生にとっても、その内容は決して易しくないのだという。授業についていくためには、小学生の頃から真面目に授業を受け、宿題をしっかりとやらないと落ちこぼれてしまう。つまり、お父さんお母さんにとって、子どもの勉強のサポートは重要な親の務めなのである。
そうして中国の子どもたちはたゆまず勉学に励み、やがて日本の大学入試センター試験に当たる「高考」を迎える。泣いても笑っても一発勝負、ここで何点取れるかで行ける大学が決まり、その後の人生を大きく左右する。当然のことながら、親御さんは試験に向かうわが子を祈るようにして送り出す。
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