中国人民銀行(中央銀行)は11日、人民元の対米ドル基準値の市場化レベルと基準性を高めることを目的に、基準値の算出方法を同日から変更することを発表した。これにより、11日の基準値は、10日の基準値と比べ2%近く下落した。この原因は11日の基準値と10日の終値の差が縮まったからであり、人民元が今後継続的に下落すると見るべきではない。人民日報が伝えた。(文:馬駿・中国人民銀行研究局チーフエコノミスト)
米国の利上げが迫る中、最近ロシア・ブラジルなどの為替レートが新たな下落圧力に直面している。中国も同じ道をたどるのではと多くの市場関係者が懸念しているが、私はこの懸念は不要と考える。多くの国をまたいだ実証研究の結果によれば、1国の為替レートが大きな下落圧力に直面しているかどうかは、その国の経済のファンダメンタルズによって決まる。経常収支赤字に直面している、対外債務の対GDP比が高すぎる、外貨準備が少なすぎる、財政赤字と債務が多すぎる、経済成長が低迷している、インフレ率が高すぎるといった問題を抱える国は、レート危機に見舞われやすい。ロシアやブラジルなどが直面している下落圧力は、経済のマイナス成長などファンダメンタルズの問題のほか、石油など大口商品の価格下落とも関係がある。大口商品の価格下落は、これらの国の国際収支をより一層悪化させた。
また一部の人は、中国の資本勘定の開放に伴い大規模な資本流出が生じ、これが人民元の下落圧力になるのではないかと懸念している。確かに、資本勘定の開放によって、中国の市場参加者の金融資源の世界的な配置の自由度と柔軟性が高まり、より多くの機構と住民が対外投資を実施できるようになる。しかし一方で、資本勘定は双方向に開放されるため、国外資本による対中投資も増加する。たとえば、欧州諸国の国債の多くは収益率が1パーセントにも満たないが、中国の債券市場のリスクフリーレート(5年債)は3.2%前後だ。低リスクの金融債や企業債も収益率が3.5~4.5%に達する。中国の債券市場は欧州の投資家にとって大きな魅力を備えているのだ。
ゆえに、対外開放の歩みと各措置の協調が取れている限りは、クロスボーダーの資本流動のリスクをしっかりと管理することができ、レートに大きな打撃がもたらされるのを回避することができる。(編集SN)
「人民網日本語版」2015年8月12日 |