日米両政府は米ニューヨークで4月27日、両国の外務・防衛の閣僚が参加する安全保障協議委員会(2+2)の会合を行い、新たな「日米防衛協力指針」(ガイドライン)を公表した。ガイドラインの改定は1997年以来の18年ぶり。改定の背景からも、協力の内容や範囲からも、これまでのガイドラインと大きく異なるもので、国際世論の高い関心を浴びている。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所学者)
日本メディアが明らかにした新ガイドラインの骨子によると、今回は、次のいくつかの点で大きな変更が加えられた。改定の歴史的な意義は、「21世紀において新たに発生している課題に対応するため、より実効的な日米同盟を促進する」とされた。日米同盟の「グローバルな性質」が強調され、平時から有事までの「切れ目のない」協力を確保し、「アジア太平洋地域とこれを越えた地域」の平和と安全に中心的な役割を発揮するとしている。最大の変化は、日米の防衛協力の範囲を規定していた「周辺事態」という概念が「重要影響事態」という概念で代えられたことである。朝鮮半島での突発事態を想定していた「周辺事態」は、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)として定義し直された。新ガイドラインは「地理的制約がない」ことを理由として、自衛隊の活動範囲は日本の周辺地域には限られないことを明確化した。日本が「存立危機事態」に直面した際に、弾道ミサイルの迎撃や停戦前の機雷掃海、米艦艇の護衛などで自衛隊が集団的自衛権を行使できるとしている。新ガイドラインはさらに、日米防衛協力の矛先をはっきりと中国に向けている。「中国の海洋進出の活発化で脅威が高まっている」とし、ガイドラインの中にも「島嶼防衛の日米共同作戦」が盛り込まれ、自衛隊が「島嶼奪回作戦」を実施し、米軍が「支援や補完作戦」を行うと具体的な分業まで決められた。
今年は、世界反ファシズム戦争ならびに中国人民抗日戦争勝利70周年という特別な年である。世界は歴史を振り返り、戦争を反省し、平和を思い、協力を求め、ウィンウィンを追求しようとしている。日米両国が打ち出した戦争準備の新ガイドライン改定は歴史の流れに逆らうものだ。理解しがたいこの行動にはどのような目的があるのだろうか。
第一に、安倍内閣が進める集団的自衛権行使などの安全保障戦略にとって、実現可能で見栄えのするプラットフォームとなる。集団的自衛権の行使を昨年7月に閣議決定で容認して以来、安倍首相は、集団的自衛権をいかにスムーズに、大規模に、「合法的」に行使するかに知恵をしぼってきた。米国のオバマ政権は、「アジア太平洋へのリバランス」戦略をいかに充実させるかという問題に直面しており、アジア太平洋の覇権維持のために同盟国の日本が急先鋒となることを望んでいる。日米両国は、互いが互いを必要とする状況の下、ガイドラインの改定という比較的穏健な手段で、双方の目的を達そうとしている。特に安倍首相にとっては、ガイドラインを改定して初めて集団的自衛権の行使に最も「合理的」な理由と口実を与えることができる。日米両国は軍事同盟国であり、米国という「盟主」が「有事」の際、または「必要」な時に、日本が「盟主」と連携して集団的自衛権を行使することはしごく当然だという論理である。
第二に、安倍首相が提唱している「積極的平和主義」の外交政策を具体化したものとなる。安倍首相の今回の訪米の重要な目的の一つは、いわゆる「積極的平和主義」の外交政策の影響力を米国で拡大することである。米国で理解と共感を獲得すると同時に、米国と連携してガイドラインを改定すること自体が「積極的平和主義」の外交政策の一環となっており、まさに一石二鳥である。日米の軍事同盟関係を深めることもできるし、「積極的平和主義」の外交政策の枠組みを支えるものともなる。「日米のグローバルな切れ目のない軍事協力」は、「積極的平和主義」の「積極」の二文字の本当の意味を表しているようでもある。「積極」が前にあり、「平和」が後ろにある。「積極」こそが本音で、「平和」は建前である。「積極」という言葉は安倍首相の心の声を表しているようだ。「積極」になってこそ、安倍首相のいわゆる「安保戦略」を実現し、日本が本当の「軍事大国」となるという最終的な目的を達成することができる。
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