外資企業の撤退について考える上でのもう一つのキーワードは「モデルチェンジ調整」だ。国家行政学院経済学部の張占斌・学部長は、次の通り指摘する。
以前は、中国の土地やマンパワー資源にかなり余裕があったが、30年あまりの急成長を経て、中国の経済発展を支える要素や条件に変化が生じた。伝統的な製造業に対する投資はほぼ飽和状態に達し、環境の受容能力も限界に達している。外資企業が、このような変化に対応するべく新たな調整戦略を打ち出さない場合、競争がますます激化する中国市場で生き残ることは難しくなるだろう。
シチズン精密(広州)有限公司が2月5日、工場の閉鎖を発表した。工場側の説明によると、閉鎖の理由は、日本のシチズングループ本社が世界戦略を縮小することになったためだという。
資本の流動は、経済グローバル化に伴う必然的な成り行きだ。優れたものが生き残り、劣ったものが淘汰されるのは、市場経済の正常な現象である。シチズンがひっそりと中国から撤退するのと同時に、日本のパナソニックグループは、デジタルカメラの生産拠点の一部を日本から中国の厦門工場に移転することを決めた。
中国商務部(省)の沈丹陽報道官は、「全体的に見ると、工場の閉鎖・操業停止の件数は多くない」との見方を示した。
〇外資企業、引き続き中国を好感
外資にとって中国は今でも吸引力を備えているのかどうか、「論より証拠」だ。2014年、中国の外資利用額(実行ベース)は1195億6千万ドル、前年比1.7%増加した。世界経済の回復基調が順調とは言えない状況のもと、世界の2014年海外直接投資は前年比8%減少したことから、中国は外貨導入額で世界トップとなった。
在中国米国商工会議所がこのほど発表した「2015年度ビジネス環境調査報告」によると、「今もなお中国を世界三大重視投資先の一つと見なしている」会員企業は6割を上回った。在中国EU商工会議所のイェルク・ブトケ会長は、「巨大な中国経済には、今でも、無限のビジネスチャンスが潜んでいる。在中外資企業は、長期かつ持続可能な『白銀時代(ポスト黄金時代)』を迎えるだろう」との見方を示した。
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