今年の全人代(全国人民代表大会)の政府活動報告では、国内総生産(GDP)成長目標が7%前後に引き下げられ、中国経済の今後の発展が「新常態」(ニューノーマル)によって位置付けられた。中国の「改革の全面的深化」はカギとなる段階に入り、経済発展の重点は「スピード」から「質」へと移行された。記者の取材を受けた日本の各経済問題専門家も、中国の経済発展モデル調整の正しさを裏付け、中国経済の発展に対する明るい見通しを示している。
▽中国経済の成長鈍化は必然
日本公益財団法人国際通貨研究所理事長・行天豊雄氏は、中国経済の成長率減速について、中国経済が長期の高度成長を経て、発展環境が変わりつつある現在、自然な現象だとの見方を示した。行天氏によると、日本も同様のプロセスを経てきている。日本経済は1950年代から60年代にかけて長期の高度成長期を迎え、GDP成長率は2ケタに達していた。だが70年代、オイルショックとブレトンウッズ体制崩壊で高度成長を支えていた条件が消えると、成長率は大幅に鈍化し、困難な転換の時期に入った。
行天氏によると、長期にわたる高度成長を実現してきた中国も、経済内部の様々な問題に直面している。問題としては、投資や輸出への過度の依存、国有企業のシェアの過剰、市場の役割が十分発揮されていないなどが挙げられ、地方政府の債務拡大も深刻化している。
2008年、リーマン・ブラザーズが破綻して金融危機が勃発すると、需要や投資の減少が世界的に問題となった。中国政府は2009年、大規模投資による刺激策を発表し、銀行の資金供給を拡大し、設備投資の増強を促し、大規模なインフラ建設を断行した。だが行天氏は、これらの措置は地方経済の問題をさらに深刻化させており、こうした高度成長を中国が維持することは不可能になりつつあると指摘する。中国には新たな経済成長モデルの模索が迫られており、「新常態」という表現もこうした事情を背景に生まれたものと考えられる。中国による経済成長モデル調整を行天氏は正しい方向性として評価している。
また中央アジア・コーカサス研究所所長・田中哲二氏は、長期にわたる高度成長を経た中国に成長率の減速が現れているのは「自然な現象」とし、「収穫逓減の法則」にものっとったものだと指摘した。中国のGDP成長率は9%から7%に下がってもまだ比較的高いレベルにあり、状況はそれほど深刻なものではない。