だがこれとは矛盾した現実がある。欧米などの西側諸国は中国の輸出制限に反対してこれを訴えながら、自国の戦略資源には臆面もなく制限措置を取っているのだ。ある学術関係者がまとめた統計によると、世界の20数カ国が資源エネルギー分野で輸出を制限する各種措置を取っているという。たとえばカナダのある州では、木材の輸出で「国内需要の試算」という措置を取る。国内や州内で木材を取り扱う者は、内部の需要を満たしてからでなければ輸出ができないという措置だ。米国も天然ガスの輸出で「輸出許可証審査」などの措置を取っている。
米欧などの西側諸国による中国レアアース包囲網には、次のような隠された意図があることは明瞭だ。それは中国の資源保護体制を攻撃するという狙いだ。ある専門家の指摘によると、米欧などの西側諸国はしばしば熟練したテクニックでルールをもてあそび、本来は公正であるはずのルールを上手に歪曲し、WTOルールの精神に基づいて自国の合法的な利益を守ろうとする発展途上国・地域に「ルール違反のレッテル」を貼りつける。西側諸国にとってみれば、自国の資源製品に対する海外からの「主体的な攻撃」には、「対抗措置」を積極的に準備しておくべきということになる。
中国は今回、レアアースをめぐって劣勢を跳ね返せるだろうか。中国社会科学院(社会科学アカデミー)国際法研究所国際経済法室の劉敬東主任によると、専門家チームの報告書には検討しなければならない点が2つあるという。
一つは輸出関税で、中国政府が「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)第20条(環境の保護に関する一般的例外の条項)を利用して抗弁できるかどうかだ。中国のWTO加盟文書には第20条が直接引用されていないが、これを根拠に中国のWTO加盟国という自明かつ基本的な権利を否定することは不公平だといえる。レアアース案件において、専門家チームの3人のうち1人が中国側の権利を認め、ブラジルやロシアといった発展途上国の加盟国も同様の見方を示した。残念なことに、2人の専門家はさきの9種類の原材料の案件での見方を踏襲し、中国側には第20条を利用する権利はないとした。
もう一つは中国政府の輸出制限措置で、専門家チームは中国の環境保護という狙いを支援し認めてはいるが、輸出割当額などの具体的な措置がWTOルールと一致しないとの見方を示す。中国側が措置を実施する中で予想を下回る成果しか得られなかったとしても、それで措置をすべて否定することはできない。そんなことをしたら、公平を失することになる。
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